2022年度は、本研究の研究成果のひとつとして、大阪工業大学の大塚生子、実践女子大学の柳田亮吾らとともに「イン/ポライトネス研究のあらたな地平」(仮題)という論文集の編集・執筆作業を行った。この本は、すでに初校ができあがっており、出版は2023年6月ごろになる予定である。ここでは、2022年度に引き続き、協調的ではないコミュニケーションがポライトネス理論やグライスの協力の原則を用いて分析することや、それらを分析するにあたって、デュースブルク大学のジークフリート・イェーガーの批判的談話分析を用いることが可能かどうかという問題を取り上げた。また、国会の答弁を対象にして、装置分析を行った。また、大塚や柳田とともにポライトネス研究の最近の動向についてもまとめ、ポライトネスとインポライトネス、協調的と非協調的という二つの軸を用いて、これまでの研究範囲などを示す試みをおこなった。そのタイトルからもわかるように、この論文集は本研究の目的とも深く結びついている。 また、コロナの状況がややよくなったことを踏まえ、2023年3月には渡独しドイツの研究者とも本研究について議論することができた。上記の論文集に執筆した論文をドイツ語にして、ハイデルベルク大学のオスカーナ・クリスチェンコ博士とその問題点について議論し、故ジークフリート・イェーガーの配偶者であり共同研究者であったデュースブルク言語研究所の所長、マーガレット・イェーガーともイェーガーの装置分析について議論する機会を得た。またコーブルクに在住の批判的談話分析の専門家である野呂香代子とも会い、2023年以降の共同研究について議論することができた。野呂とはこれまでの研究成果について議論し、今後、フーコーの装置分析の可能性について議論する勉強会を行うことにした。これらは直接的に本研究全体の成果と関係する。
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