研究実績の概要 |
平成30年度は,5地域10地点(大三島・上浦・大下島・小大下島・岡村島・岩城島・佐島・生名島・弓削島・魚島)において、インタビュー調査をおこなうことができた。大下島・小大下島など一部の島では、若年層・中年層がいない、あるいは都合がつかないことから、老年層のみの調査となったが、他の地点では、若年層・中年層・老年層の3世代の調査をおこなった。調査においては、話者の負担等を考慮し、当初予定していた漢語・外来語については最小限度にとどめ、和語を中心とした調査をおこなった。 昨年度の調査した結果をもとに、とくに漢語アクセントに注目して分析・考察をおこない、 論文(「愛媛県東中予方言の2字漢語アクセントの世代差」『愛媛大学法文学部論集人文学編』第45号、1-22、2018年9月)として著した。この論文では、松山市・今治市の若年層、松山市・今治市の老年層、京都方言、共通語において、下げ核の有無(位置)が、基本的に同じであることを明らかにした。また、<下げ核>の有無(位置)について、従来指摘されていた、後部要素の拍数によるのではなく、音節構造が関与している可能性が考えられることを指摘した。 今年度の調査によって、中央式(京阪系アクセント)と、いわゆる東京式アクセントとの境界が、従来の報告等と同じであることを明らかにした。また、東京式アクセントの地域において、とくに老年層に古いタイプが残っていることを確認した。 調査で得られたデータについては、データベース化(「芸予諸島方言アクセントデータベース」)を進めている。
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