令和4年度は、調査を再開し、広島県側の「瀬戸内しまなみ海道」周辺域16地点で調査を行った。これまで調査してきた愛媛県側の調査結果も含め、芸予諸島における名詞・動詞・形容詞のアクセントについて分析した。その結果、名詞・動詞・形容詞すべてにおいてアクセントタイプの分布域が同じであること、「下降式音調」については、名詞等の分布域とやや異なることなどが明らかになった。世代差について分析したところ、品詞やアクセントタイプに関係なく、世代が若くなるにしたがって共通語化が起きていること、「京阪式アクセント(中央式)」の地点において、より共通語化が顕著に起きていることが明らかになった。これらの結果をもとに、歴史的変遷について考察したところ、かつて芸予諸島には、 広い地域に「京阪式アクセント」(中央式)が分布しており、それが他地域との接触による影響を受けつつも、自律的な変化によって「東京式アクセント」へ変化した可能性が高いことが明らかになった。 「瀬戸内しまなみ海道」の架橋が、各地の方言(アクセント)に影響を与えたのかについて、半構造化インタビュー調査を行い、分析したところ、架橋による影響はないことが明らかになった。 アクセントに関する調査で得られたデータについては、「芸予諸島方言アクセントデータベース」としてまとめた。 以上の研究成果について、報告書にまとめるとともに、ホームページを開設し、広く公開した。
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