本研究の目的は、現代日本語と韓国語のコピュラ文の特徴を、形態・意味・語用論的な対照分析によって解明しようとするものである。「N1はN2だ」「N1だ」「N1はN2がN3だ」型の文など定型化した文に加え、「です」「の」等コピュラ関連形式、名詞止め文等を取り上げ、対照的に分析することで、日韓のコピュラとコピュラ文の特徴を包括的に把握することを目指している。 2021年度は、研究期間の再延長年度に当たる。本研究は3年間ほぼ計画通りに進んだが、研究成果をまとめた書籍の編集や校正などのため1年の延長を受けていた。さらに、コロナ等の状況によって3月までの出版が厳しい日程となったため、再延長を受け、2021年7月に出版をすることができた。研究成果をまとめた書籍はひつじ研究叢書(言語編)第183巻『コピュラとコピュラ文の日韓対照研究』で、以下のような構成になっている。 第1章 韓国語コピュラ文の意味論:西山(2003)による基本型コピュラ文の日韓対照、第2章 一項名詞文から見る「だ」と「ita」の意味機能、第3章 ウナギ文の日韓対照、第4章 動作性名詞述語文とコピュラ、第5章 日韓の拡張型コピュラ文、第6章 分裂文から見る日韓コピュラの特徴:述語前置型分裂文の分析を兼ねて、第7章 「AはBだ」から「BのA」へ:いわゆる属格助詞の日韓対照を兼ねて、第8章 結論。 本研究は、日韓対照分析を通してコピュラ文の本質を把握しようとする初めての試みで、両言語のコーパスなど自然言語データを使用し、基本的なコピュラ文のみならず、コピュラ文の拡張的な用法やウナギ文や分裂文など周辺的現象を分析的かつ統括的に扱っている点においてその言語学的意義は大きいと言える。
|