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2017 年度 実施状況報告書

動詞活用の乱れは、音韻、意味の乱れと、悪い友達

研究課題

研究課題/領域番号 17K02737
研究機関県立広島大学

研究代表者

渡辺 真澄  県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (60285971)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード動詞活用 / 規則と例外 / 膠着語 / 屈折語
研究実績の概要

平成29年度は、7月~12月の間、研究協力者であるマンチェスター大学のLambon-Ralph教授の研究室に滞在し、英語と日本語の動詞活用の研究を行っているケンブリッジ大学のPatterson博士も交え、議論を重ねた。日本語の動詞活用に関しては15年ほど前に故伏見貴夫博士、Patterson博士、および研究協力者の辰巳ほかがJ Mem Langに投稿し、修正途中で終った研究が唯一のものである。そこでまずその研究の刺激語と実験データを関係者に発掘してもらい、再分析することから始めた。15年前、動詞活用に関しては、規則動詞の処理を行う「文法」(grammar: look→looked)と例外動詞の活用形(give→gave)を保持する「レキシコン」の二重機構を仮定するPinkerらと、規則動詞、例外動詞が同じ機構により処理されるとするコネクショニストとの間で激しい論争が行われていた。伏見らの研究も日本語の動詞を規則/例外動詞(五段/一段動詞)に分けて活用成績を比較したが、成績差が安定せず、また規則活用されるはずの非語動詞の正答率が著しく低い場合(例、もさかぶ)があることが判明した。もし日本語の非語動詞が規則に基づき活用されるなら、英語の場合と同様に、実在動詞の正答率と同等になってよい。英語は屈折語だが動詞活用は非常に単純であるのに対し、日本語は膠着語で動詞活用は規則的だが種類が著しく多い。そこでこの15年間に発表された多数の論文を調べたところ、我々の再分析結果と同様に、フィンランド語(膠着語)の動詞活用や、セルビア語(屈折語)の複雑な名詞の屈折は、英語のように単純に規則/例外に区分け、比較することには無理があることが判明した。日本語の動詞活用には、意味の有無が大きな影響を与えるようであり、少なくとも意味の関与を考慮する必要がある。このため新たな枠組の中で実験を行うことになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上述の日本語の先行研究の筆頭研究者は亡くなっており、投稿からはすでに15年の月日が流れている。マンチェスター大学での6ヶ月の滞在中に、伏見らの投稿論文の刺激語や実験データを収集したが、掛かった時間の割りには得られた資料は多くなかった。情報が少ないためデータの再分析にも多大な時間を要した。その間、関連文献を検索して読み、また研究代表者の渡辺が予備的に行っていた動詞活用の実験結果などにもとづきLambon-Ralph教授、Patterson博士、および日本の研究協力者との度重なる議論を行い、新たな枠組みの中で研究計画を組み立て、実験を行うことになった。当初の計画通りに研究が進まなかった点で一歩後退したのは事実であるが、視野が格段に拡がったことで数歩前進できたと感じている。予想に反し、滞在先のマンチェスター大学には日本人がほとんどいなかったので実験を行うことは不可能であったが、帰国後、実験環境を整えてから行うこととなった。

今後の研究の推進方策

現在使用中の心理実験用ソフトE-Prime2.0 を、反応時間の測定精度が格段に高く、使い勝手の良いE-Prime3.0にバージョンアップしたので、実験環境が整い次第、被験者募集し、実験を開始する。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 上述のように、先行研究のデータ分析、研究協力者との議論に多大な時間を要したこと、滞在先のマンチェスターに被験者となる日本語話者がいなかったこと、などの理由により、実験を行うことができなかったため、被験者への謝金使用金額などが予定より少なかった。

(使用計画) 計画中の実験を実施し、被験者、データ処理協力者への謝金に使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] NARU, Univ. of Manchester/University of Cambridge(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      NARU, Univ. of Manchester/University of Cambridge
  • [雑誌論文] 脳における言語の神経機構(特集 声とことばの異常ー検査所見と診断のポイント 言語の異常)2018

    • 著者名/発表者名
      渡辺眞澄, 辰巳 格
    • 雑誌名

      Journal of Otolaryngology, Head and Neck Surgery

      巻: 34(2) ページ: 235-238

  • [雑誌論文] 絵の呼称プロセスー意味・統語(品詞)・音韻の影響2017

    • 著者名/発表者名
      渡辺眞澄、中村あかね、佐久間真理、津田哲也、筧一彦、辰巳格
    • 雑誌名

      高次脳機能研究

      巻: 37(4) ページ: 403-412

    • 査読あり
  • [学会発表] 言語聴覚士の仕事と失語症: 他の専門職との連携を見据えて2017

    • 著者名/発表者名
      渡辺眞澄
    • 学会等名
      平成29年度 日本学校心理士会 愛媛支部研修会
    • 招待講演
  • [図書] ことばと文字2018

    • 著者名/発表者名
      『ことばと文字』編集委員会(編)
    • 総ページ数
      207
    • 出版者
      くろしお出版
    • ISBN
      978-4-87424-764-8 C3381
  • [図書] 音響サイエンスシリーズ17 聞くと話すの脳科学2017

    • 著者名/発表者名
      日本音響学会(編)廣谷 定男(編著)
    • 総ページ数
      237
    • 出版者
      コロナ社
    • ISBN
      978-4-339-01337-5

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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