研究課題/領域番号 |
17K02745
|
研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
斉藤 くるみ 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (30225700)
|
研究分担者 |
矢内 賢二 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (00579328)
相原 朋枝 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 准教授 (60334562)
渡部 淳 日本大学, 文理学部, 教授 (80366541)
槻舘 尚武 山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (80512475)
大野 ロベルト 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 講師 (80728915)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 視線 / コミュニケーション / 手話 / 落語 / 舞踊 / 文学 / 演劇 |
研究実績の概要 |
視線には見るための視線とコミュニケーションのための「見せる視線」と無意識な「心理的視線」(思い出そうとするとき上方に視線を動かす)がある。この中でコミュニケーションのための視線、すなわち「見せる視線」の中には、指差しに伴う何かを指し示すための「見せる視線」、共感性を高めるための「見つめ合う視線」がある。「見せる視線」の最も精巧のものは日本手話の文法機能をもつ視線である(視線によって文の意味が変わる)。 代表者は「見つめ合う視線」が「見せる視線」に転換したものがあることを発見した。それは手話の話法(他者の言動を述べるときのロールシフト)から、話者対受け手にチャンネルがかわるときの双方が「見つめ合う視線」や、落語で芝居がとぎれ、観客にト書きのような説明をする場合の観客に向ける視線である。これをセッティングスイッチマーキングのためのゲイジングと定義した。 本研究は手話、演劇、舞踊、落語等を分析し、セッティングスイッチマーキングとしての視線があることを示すとともに、それぞれジャンルによって使い方が違うのかも調べる。今年度は手話に酷似した手や顔や視線の規則を持っているインド舞踊を手話者に覚えさせる実験を行った。その結果、手話者はインド舞踊の模倣をするときに、無意識で視線を規則の一部と認識していることがわかった。ろう者でも第一言語が「日本手話」でない人はインド舞踊の視線に気づかず、模倣をするときも視線を動かすには至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィリピンの二地方でろう者の手話を収集することができた。学校に通う人と教会の信者の協力を得たが、学校の生徒には成人するまで学校に通うことができなかったという貧困な人々もおり、彼らの手話は教育による手話とは限らない。子どものころからろう学校に通っていた人との比較はかなり重要な資料となる。一方、親もろう者であれば手話の視線の規則が獲得されていると考えてよい。日本手話と同様で視線はネイティブサイナーしか巧みに使わないとすれば、ネイティブサイナー独特のゲイジングの規則は日本手話のそれと似ている、あるいは同じである可能性が高い。 またインド舞踊の視線も収集できた。クラッシックバレーや舞踏の視線についても専門的な知識が得られた。落語の視線も検討し、文学上では同じメカニズムがあるかどうかも専門家である分担研究者が検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
手話については、手話者の教育環境、家族環境(親も手話者であるネイティブサイナーかどうか)も考慮しながら、得られた資料を分析する。またインド舞踊の単語を真似させたとき、視線も含んで再現できる人は聞こえる人には少なく、ネイティブサイナーは気づかせなくても視線も含めて覚えていることがわかったため被験者を増やして、結論を出したい。また今まで分析してきた落語について、講談のほうが観客へのゲイジングが多いのではないかということに気づき、落語と講談の比較も始めたところである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者の大野と渡部が2019年度の学会発表に使うため、予算を残して繰り越した。
|