研究実績の概要 |
本研究は、日本語と英語の話ことばの対照研究から得られた知見をもとに、日本語と英語の異なりを適切に橋渡しする英語教育に向けての提言を目指すものである。 2022年度の主要な活動は下記のとおりである。(1)本研究で導いた、日本語は「具体のことば」、英語は「抽象のことば」という発話モデルに基づき、母語である日本語、および、学習対象言語である英語の基本理解を促すための授業用教材を作成し、大学、大学院の授業で活用した。それに対する学生からのフィードバックを得た。(2)日本語と英語の本質を追究することを目的として、日本文学・日本語学者の熊倉千之氏に連続講義を行っていただいた。関係領域の研究者にも参加いただき、日本語の論理と英語の論理、さらには、義務教育における英語教育、国語教育の課題について議論を重ねた。 本研究期間全体を通じて実施した研究の成果として下記が挙げられる。(1)文科省検定英語教科書において、一人称代名詞“I”、指示詞“this, that, it”、動詞の過去形“-ed”などの基本項目がどのように導入されているのかを検証した。その結果、それらの項目について日本語と英語の根源的な異なりが適切に橋渡しされていない現状が指摘された。日本英語教育学会における口頭発表で英語教育の改善に向けての提言を行い、教員や研究者から有意義な意見や助言をいただいた。さらに、研究結果を論文にまとめ公表した。(2)日本語と英語の異なりを適切に橋渡しするために作成した授業用教材を英語教育に活かすことができた。教材をもとに、日本語と英語の本質を捉え直し、いかにして日本語母語話者としてのアイデンティティを維持しつつ、国際コミュニケーションの手段としての英語を学び使うかといった問題を考えた。
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