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2018 年度 実施状況報告書

記述・フィールド言語学向け言語資料の理論的・実践的言語ドキュメンテーション研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02749
研究機関鶴見大学

研究代表者

大矢 一志  鶴見大学, 文学部, 教授 (80386911)

研究分担者 長崎 郁  大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (70401445)
小野 智香子  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 特任研究員 (50466728)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード言語ドキュメンテーション / セリクープ語 / イテリメン語 / データベース / 人文情報学 / digital humanities / digital research / online lectures
研究実績の概要

3年計画の2年目であるH30(2018)年度には,(a)フィールドワークの実践(実践的フィールド上ドキュメンテーション),(b)フィールド外ドキュメンテーション(データ整理),(c)データ変換書式の策定,(d)動向調査,(e)学習項目の策定が研究計画書の活動項目として挙げられている.これに昨年度の成果を踏まえ,(e)に代わり(e')学習教材の作成を2年目の目標とした.(a)(c)については計画に修正が発生し,(b)(d)(e')については順調に進行している.
(a)については,前年度にインフォーマントの死去によるフィールド調査の中止という事態が当該年度においても影響し,カムチャッカでの調査ができなかった.またシベリア地方の調査についても,フィールド調査時間の調整が間に合わず中止することになった.本来であれば(a)フィールド上ドキュメンテーションの成果をもって(b)フィールド外ドキュメンテーション活動(データ整理等)が実現することになるが,幸いにも担当する分担者である長崎,小野両氏はこれまでの膨大なフィールド調査のデータがあることから,過去のフィールド調査で得られたデータをもとに(b)フィールド外ドキュメンテーションを実施することができた.
(c)については計画上前年度に作成される予定であった書式実験用のソフトが完成されていなかったことから,書式策定は行えていない.代わりに,研究計画を前倒しで進めた(e')学習教材の開発は終了し,公開することができた.(d)については順調に情報収集・動向調査が行われた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度ではフィールド調査をできなかったが,これまでのフィールド調査で得られたデータを利用しフィールド外ドキュメンテーション活動は順調にすすめられた.FLExを使ったイテリメン語のデータ整理やセリクープ語データのアノテーション整理などが進められた.
理論的フィールド外ドキュメンテーションである記録変換の研究については,予定していたデータ変換書式の検討が十分には進められていない.その背景として,本研究を始めた背景にあった大規模言語ドキュメンテーションが統一データフォーマットを採用し,個人の言語ドキュメンテーション活動を圧迫しているという状況が変化したことがある.具体的には,統一フォーマットによるアーカイブへの期待が薄れてきたことがある.世界的に言語ドキュメンテーションの方向性が見えなくなったと判断している.実用向けの成果である書式作成に労力を割くことに疑問が生じたことが検討が遅れている理由である.
一方で,記録教育として前年に策定したモデルシラバスをもとにしたweb上のオンライン教材は,1年前倒しで完成することができた.この教材は,言語ドキュメンテーションの基礎知識として不足している計算機科学の領域を扱うコースであるほか,新しいオンラインコースのスタイルとしても価値あるコースになっている.具体的には,従来のオンラインコースと比較し制作時間を圧倒的に短くすることができる教材になっている.
動向調査については,DRHA2018とDLF2018に参加し,Digital Humanitiesのキュレーション,DigitalHumanities/Researchとデータ保存研究の最新状況とその取組についての情報を得ることができた.とりわけデータ保存のあり方や「運営」と「データ」を一体化して考える視点からは言語ドキュメンテーション活動にとっても重要な知見をえることができた.

今後の研究の推進方策

フィールド上ドキュメンテーションの実践として,次年度はフィールド調査を実施したい.フィールド外ドキュメンテーションの実践としては,引き続きフィールド調査で得られたデータの整理を進めてゆく.フィールド外ドキュメンテーションの理論としては,規格を固定化した変換ソフトを作成する代わりに,作成したデータモデルに関するオンラインコースの応用編として,データ変換に関連するオンラインコースを作ることで,言語ドキュメンテーション活動の支援研究としたい.可能であれば,このオンラインコースの教材レベルとして使用する変換ソフトを開発する.また,前年に計画を変更し中止をしたフィールド上ドキュメンテーションの理論研究であるフィールドノートからの記述ルール分析に代わる研究として,フィールド外ドキュメンテーションの実践・理論両面の研究として,新たに,言語ドキュメンテーション向けデータベースの研究を始める.従来の数値向けデータベースであったリレーショナルデータベースは,言語資料といういわゆる疎データには不向きである.ところがテキスト・ドキュメント向けのデータベースいわゆる非RDBは言語学研究者を含む人文学研究者にとって馴染みがない.そこで,オンラインコース「データモデル」の続きとして,人文資料向けのデータベースに関するコースを作成すべく,その基礎研究を始めることにする.

次年度使用額が生じた理由

計画上フィールド調査の旅費をデータ整理に使用したことによる差額と,計画上動向調査の海外出張旅費で,1回には不十分な旅費が差額として残ったことによるもの.ともに次年度計画の活動に使用する予定である.

備考

製作者:大矢一志,公開日:2019年3月24日,利用条件:オープンアクセスのオンラインコース

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] イテリメン語の類型的特徴 --系統か接触か--2019

    • 著者名/発表者名
      小野智香子
    • 雑誌名

      第33回北方民族文化シンポジウム網走報告書 環北太平洋地域の伝統と文化 3 カムチャツカ半島・千島列島

      ページ: 37-42

  • [雑誌論文] The focus construction in early modern Kolyma Yukaghir2018

    • 著者名/発表者名
      Nagasaki, Iku
    • 雑誌名

      Gengo Kenkyu

      巻: 154 ページ: 123-152

    • DOI

      10.11435/gengo.154.0_123

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ユカギールの言語と文化2018

    • 著者名/発表者名
      長崎郁
    • 学会等名
      シベリアの文化に触れてみる,鶴見大学比較文化研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] イテリメンの言語と文化2018

    • 著者名/発表者名
      小野智香子
    • 学会等名
      シベリアの文化に触れてみる,鶴見大学比較文化研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] Typological features of Itelmen and its neighboring languages2018

    • 著者名/発表者名
      Ono, Chikako
    • 学会等名
      NINJAL International Symposium: Approaches to Endangered Languages in Japan and Northeast Asia: Description, Documentation and Revitalization
  • [学会発表] Изменение валентности в ительменском языке2018

    • 著者名/発表者名
      Ono, Chikako
    • 学会等名
      Conference on Uralic, Altaic and Paleo-Asiatic languages in the memory of Alexander P. Volodin
  • [備考] Data Mode, Lectures for Radio

    • URL

      https://infon.org/lr/lddm/lddm_top.html

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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