令和5年度は第十一届意日中研究生語言文化交流研究論壇において代表者と分担者2名がそれぞれ以下の題目で発表を行った。 「19世紀中文讃美詩-以官話讃美詩為中心-」19世紀にプロテスタント宣教師が中国に入り、宣教活動の傍ら礼拝で使用する中国語の讃美歌の翻訳と編纂行うようになる。当時漢訳聖書の事業に携わった人々の多くが讃美歌の編纂にも関わっている。彼らによって19世紀初期は文理体の讃美歌が編纂されるが、19世紀中盤になると方言を用いた讃美歌が編纂され、その後それらは官話の讃美歌へと変化していく。本発表では、19世紀漢訳讃美歌編纂の大きな流れを明らかにした。 「『客問條答』について」『客問條答』(1882)はイエズス会宣教師が上海で翻訳、刊行した教理啓蒙書であり、後に日本で活躍していた宣教師プチジャンが購入し、長崎の羅典神学校の教科書としても使われた。西洋から中国、そして日本へとつながる新しい知識の伝播ルート、そして漢文、漢字を媒体にした翻訳書は明治期における西洋文化の伝来と受容を象徴する特徴の一つである。 「浅論東亜同文書院編《北京官話教科書》」同文書院は日本のアジアでの活動促進を図る東亜同文会が、1901年上海に開設した高等教育機関である。初期の同文書院では北京語会話テキスト『華語[足+圭]歩』が使われており、さらに専用教材『北京官話声音譜』や『北京官話教科書』が作成されていた。本発表では本書の紹介と本書で用いられている官話の分析が行われた。 19世紀から20世紀初頭にかけて非母語話者によって執筆された中国語書籍を資料として、新しい知識の流入と当時の中国語の一班を知ることができる。
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