本年度も、前年度と同様に研究課題に関する発展的・応用的研究に力を注ぐとともに、最終年度のまとめを行った。前年度に引き続き、韓国における社会方言と言語政策の関係に関する研究を進め、具体的事例の収集に努めた。また、研究の幅を広げるべく、外部研究者の協力を得て、日本、タイ、マレーシアの事例との比較研究も進めた。
研究成果の一部は国際学会で発表した。また、発展的・応用的研究活動の一環として、これまで執筆した小文を取りまとめ、内容に一部改訂を加えた『韓国現代史の風景:ことばとアイデンティティのゆくえ』を刊行した。そのなかでは、韓国の国語基本法や標準語規定、方言のイメージ、手話、点字に加え、朝鮮解放期の言語政策をめぐる諸問題にも触れている。このほか、研究協力者の論稿および関連資料の翻訳を加えた英文論集を公刊する準備を進めており、2023年度中に刊行できる見通しである。
さらに、新型コロナウイルス感染防止のための規制が緩和されてきたことを受けて、補充調査と成果公開を積極的に推進し、研究課題の補助期間の終了後も研究成果を追加公開していく準備を進めている。研究成果の公開には、オンラインプラットフォームやデジタルツールの活用を含め、適切な方法と手段を検討している。本科研の補助期間は終了したが、今後も研究を深化・発展させていく所存であり、特に社会方言および消滅危機言語については、日本およびほかのアジア諸地域・諸言語の状況との比較を含め、積極的に研究を進めていきたいと考えている。
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