人間言語には、Mimetics(擬態語/擬情語)の豊かな言語とそうではない言語がある。類型的見地に立ち、言語を理論的に分析するとき、日本語には、言語間の相同と相違を解明するためのヒントが多くみいだされる。その一つに、Mimeticsと称される表現が、動詞や副詞、形容詞や名詞といった統語範疇として生産的かつ体系的にふるまう事象があげられる。Mimeticsの豊富な言語にはどのような特徴があるのか。なぜMimeticsの豊富な言語とそうではない言語が存在するのか。これを究極的な研究課題として、本プロジェクトは、Mimeticsの豊かな膠着言語の特徴を顕在化させる点に着目し、分析を進めた。 2017年度に始まった本プロジェクトは、2018年5月5日カナダ(トロント:York University)の国際ワークショップでの研究発表を皮切りとし、Nanzan Linguistics 14などでの中間報告論文の発表を経て、主としてMimeticsを含む形容詞・形容動詞の統語的・音韻的・形態的特徴を具体的な分析対象とした研究が進められた。名古屋大学准教授秋田喜美氏と私(村杉恵子)は定期的に研究会を行い、また、南山大学言語学研究センターとの共同国際ワークショップを開催することで多くの研究者と交流した。コロナ禍においてもZOOMを用いて研究会や国際ワークショップを開催し、意見を交換してきた。2022年度には、それらの成果として、Mimeticsを含む形容詞として生産的に創造される要素についての意味的・音韻的・形態的・統語的特徴を抽出し、新たな分析を加え、新造語にも既存の形容詞に関する文法と同質の規則が働くことを示す論文をまとめた。JohnBenjamins出版の書籍の一章として発表された。ヨーロッパ言語学会での口頭発表を経て、最終年度には、国際学術雑誌Morphologyに論文が掲載された。
|