研究実績の概要 |
研究期間全体を通じて実施した研究成果は、学術論文7点、学会発表7件(うち国際学会2件、招待講演2件、共同発表1件)である。最終年度公開の業績は「『日本広東学習新語書』の人称代詞複数形と訓読について」神田外語大学『日本研究所紀要』第15号,p171-177,2023年3月末日刊、である。 代表者は清末(1849~1860年間)刊行『華英通語』(4種)収録の単文・語彙と音訳字の中古音系によるデータベース作成を進めた。また『日本広東学習新語書』(神田外語大学所蔵、以後『新語書』と称する)収録の漢語語彙・語文についての片仮名音注の全文を学生アルバイトの協力を得てエクセル入力し、データベース化を済ませた。その成果は2024年度公刊を決定している。『新語書』を取り上げた理由は、同書収録の語彙・語文は『華英通語』と同様、商業交易上の語文を特徴とするものであり語学上の共通点を有するからである。 代表者はまた『天路歴程』官話版および粤語版に基づくデータベース作成作業をすすめた。前者のテキストはオックスフォード大学図書館所蔵の「官話版」(京都福音堂、1865年刊)、後者テキストは東北大学図書館所蔵(羊城恵師禮堂、正編1871年刊、続編1870年刊)を使用し、研究期間中に個々第1巻を電子化し終えた。 分担者が採用した民国初期資料は、王力(1900-1986)が「歐化語法」例に挙げた徐志摩(1897-1931)作品、および趙元任(1892-1982) によるLewis Carroll(1832-1898)作“Alice’s Adventures in Wonderland”(1865)の漢訳版『阿麗思漫游奇境記(1922)の言文一致体文である。研究期間中にデータベースとしてCarroll原文、日本語訳、趙元任漢訳文を併せて対照しつつエクセル入力を済ませた。同データベースの公刊計画を進めている。
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