研究課題/領域番号 |
17K02757
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
奥村 佳代子 関西大学, 外国語学部, 教授 (10368194)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 清代供述文書の口語体の特徴 |
研究実績の概要 |
福安教案とは、1746年(乾隆11年)に福建省福安県(現在の福安市)で起こったキリスト教案件であり、キリスト教入信に伴う非婚に対する取り締まりの強化に伴い、事件の経緯、尋問記録、それを巡る事柄を記述した一連の文書である。福安にキリスト教徒が多数存在していたこと、また特にキリスト教入信にともなう非婚を問題視した中国側は、5人の西洋人宣教師および彼らと繋がりのあった中国人に対し、それぞれ尋問を行った。その尋問記録のオリジナルは、フランスのAMEP(Archives des Missions Etraneres de Paris)に所蔵されている。本来であれば、オリジナルに基づいて調査をすべきだが、今回は呉旻、韓琦編2008《欧洲所藏雍正乾隆朝天主教文献彙編》所収の福安教案に基づいた。 呉旻、韓琦編2008所収の「二十九、福安周県官初審問供(乾隆十一年,1746)」と「三十三、福建章州府章浦県袁本濂邵武府建寧県王文昭会審福安天主教案招册(乾隆十一年,1746)」の中国人による尋問と西洋人宣教師とを取り上げ、福安教案の尋問と供述の記録では、話された言葉としてどのように記述されているのかを、それぞれの基本的な語句の使用状況を整理し概観した。 中国側の尋問にせよ西洋人宣教師の供述にせよ、同一人物の供述であれば、同じ行為や事柄を表すのに豊富な語彙を駆使するのではなく、固定された、もしくは2種類程度に限定された語彙を使い回しているということがわかった。特に、西洋人宣教師が話した言葉としてふさわしい形に記述すれば、語彙の使用が限定されている。 今回の調査は、清代の記述された尋問と供述の中国語を整理し、同時代の白話や域外で記述された中国語との相違点の有無を確認することを目的とする一連の研究課題の基礎作業として位置づけられるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
想定外の業務(主に大学でのオンライン授業のための教材作成)が想像以上に時間を要し、また体力的にも消耗したため、本研究課題に必要な時間、体力、気力が不足した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の経験によって、授業運営に必要な時間は軽減されており、その分を本研究課題の推進に費やすことが可能であり、文字入力などの単純な作業に関してはアルバイトの協力をより積極的に得ることにより、遅れを取り戻したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
出張による調査が不可能であったために、旅費としての使用ができなかったことと、本課題l研究に必要な時間を取ることができなかったこと、文字入力をアルバイトの雇用がうまくできなかったこと、個人で行った文字入力作業に多くの時間を費やしたことにより、次の段階に進むことができず、必要な図書資料の購入ができなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。今年度は、複数名に対するアルバイト料と、档案関係資料と白話文に関する先行研究図書資料の購入費用として使用する計画である。
|