研究課題/領域番号 |
17K02757
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
奥村 佳代子 関西大学, 外国語学部, 教授 (10368194)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口語体 / 言文一致 / 白話 / 文言 / 清代供述文書語彙 |
研究実績の概要 |
『欧州所蔵雍正乾隆朝天主教文献彙編』(呉旻、韓琦編、上海人民出版社、2008年)所収の全キリスト教案のデータベース(初稿)を、アルバイトの協力を得て作成した。個々の案件に関する語彙の使用状況調査は個別案件の語彙の特徴を知る上で有効な調査方法ではあるが、本データベース作成により、個別の事例ではなく、供述書全体の語彙調査が可能となった。 本研究の目的は、清代のキリスト教案の使用語彙の実態と文体の特徴を、特に尋問の言葉と供述の言葉に焦点を当て、どのような語彙が用いられており、使用者による語彙の違いがあるのかを明らかにしようとするものであるため、本データベース作成の意義は、語彙の検索を効率的に行うことができるようになった点にある。 また、語彙索引作成のための作業を開始した。中国語は単語で区切らずに表記される言語であるため、語彙索引を作成するためには語彙ごとに漢字の羅列を区切る作業が必要であり、内容を精読しながら区切る作業を継続中である。語彙索引は、当該文書がどのような語で記述されたものであるかを示すものであり、また、作成者の中国語の捉え方が如実に反映されるものであるため、その意義は大きい。 さらに、供述書の文体と口語体書面語との関連性を調査するという将来的な目標に対しても、利用価値の高いデータベースであるといえ、今後公開に向けてデータベースとしての完成度を高めることができれば、重要性が増すものと期待できる。 語彙調査の経過報告は、2021年度ヨーロッパ中国学会(EACS、欧州漢学学会)研究大会パネル発表、2021年度世界漢語教育史学会基調講演で触れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID19によって海外調査を行うことはできなくなったが、手元にある資料からデータベース作成を行うこととし、アルバイトの助けも得ることができたため、作業を進めることができた。 語彙索引作成に関しては、作成者の中国語の捉え方が反映されるため、機械的に作業することはできず、精読や考察をしながら慎重に行っているため、予定よりやや時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、『欧州所蔵雍正乾隆朝天主教文献彙編』収録教案文書のデータベースの完成度を高めるために、誤字脱字の最終的なチェックを優先的に行い、2022年6月末までにデータベースを完成させる。 次に、完成版のデータベースに基づき、2022年9月末までに語彙索引を完成させる。 さらに、完成版テータベースと語彙索引をもとに、使用語彙と文体の特徴を整理しまとめる。まとめ方としては、品詞や語としての機能を重視した分類法と、具体的な場面や案件等の内容による分類法とを用い、それぞれの語彙リストを作成する。 データベース、語彙索引、語彙リストの公開準備を2022年度内に済ませる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来の研究計画では、パリ外国宣教会档案館(AMEP)での資料調査のための資金を確保することになっていたが、海外渡航が叶わなかったため、国内で可能な調査に変更したことによって予算を使い切ることができず、次年度使用額が生じた。 2022年度は、海外での調査が実現できるかどうか現時点では不明である。AMEP訪問のための準備が間に合わない場合には、同じく中国におけるキリスト教案資料を所蔵しているローマのイエズス会のアーカイブかバチカン図書館での調査の可能性を探りたい。いずれも2022年度内での調査が不可能であることが判明し次第、別の文献資料(中国故宮博物院所蔵キリスト教档案資料)のデータベース作成を行うための費用(入力補助等のアルバイトへの報酬が主な用途となる予定であり、一部を文献資料の購入代金に当てる可能性もある)として使用する。
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