新型コロナウイルス感染症の感染拡大により学会等が中止され,成果発表が行えなかったため,補助事業期間を延長した.延長後の最終年度である令和2年度には,引き続きオープンソース形態素解析エンジンであるMeCab(めかぶ)を用いて形態素解析を行うための解析用辞書を構築し,実際に15世紀朝鮮語の形態素解析を行った.解析用辞書に登録されている項目は9185項目,辞書の学習に用いている学習用データは2653文となった.形態素解析については『釈譜詳節』巻20,21の作業が終了し,『釈譜詳節』初刊本は全てデータがそろうこととなった. これらの結果を活用して,『釈譜詳節』の各巻およびその他の資料を多変量解析の手法により分類する試みを行い,朝鮮語研究会(第266回.オンラインにて開催.2020年9月5日)にて成果発表を行った.この成果により,『釈譜詳節』のうち,釈迦の一代記「釈迦譜」などの説話からなる巻と,『法華経』など仏教経典の翻訳からなる巻との間で,接続形語尾の分布に違いが見られ,クラスター分析によりこれらのグループを分類できることがあきらかになった.本研究を通じて,15世紀朝鮮語資料について計量的な分析を行うことが可能であり,そのための形態素解析作業が重要な意味を持つことを示すことができた. 今後は,他の15世紀朝鮮語資料についても形態素解析を行い,ジャンルや底本などの違いによる文体的な差を明らかにするべく,作業を展開していく予定である.
|