研究課題/領域番号 |
17K02759
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
長谷川 由美 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (40585220)
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研究分担者 |
本田 久平 大分工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40342589)
田中 省作 立命館大学, 文学部, 教授 (00325549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 指文字 / ゆらぎ / パターン認識 / 3次元データ / コンピュータビジョン |
研究実績の概要 |
手で表す仮名である「指文字」は手話学習には必須であり、最も初期段階で学ぶものの1つである。書籍やDVDなど様々な媒体による指文字学習教材があるが、教材によって手本として提示されている指文字の形状には違いがある。そこで本研究では、指文字のゆらぎに対し、①目視による観察的観点と②パターン認識技術を利用した情報的観点の2つの観点から、各指文字のゆらぎを補足し、本質的な形状を明らかとすることが、本研究の目的である。 まず、本研究においては「できるだけ持ち運びが楽で、設置が簡単で、被験者の負担にならない使いやすいシステムの構築」を念頭に置いているため、その条件を満たすディバイスの候補のひとつとしてLeap Motionを使用した。Leap Motionで取得されたデータとSVM識別機を使って識別できるかどうかの調査を行ったところ、いくつかの指文字で形状が似ているため、誤認識が生じた。 SVM識別機で用いる5つの特徴量(①指先角度②指先と手の中心との間の距離③指先の標高④手の向き⑤掌の法線ベクトル)をもとに多次元尺度図を作成した。上記⑤角特徴量を使用し、ユークリッド距離の数値を調べたところ、指文字「う」と「ら」の距離が近いことがわかり、そのために「う」と「ら」の誤認識が起こしていることが分かった。「う」と「ら」を正しく認識するためには「う」と「ら」の距離を大きくするような特徴量の選定が必要である。 また、特徴量の①②③だけを使用し多次元尺度図を作成したところ、5つの特徴量を使用したものよりも、同じ指形状のものが近くに分布することが分かった。例えば「ゆ」と「わ」など掌の方向は違うが指形状が似ているものは、人が指文字を覚えるときに混乱を招くものではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
指文字の手指形状データを収集するために、初年度である平成29年度には、Leap Motionを使って17名の被験者の指文字データの収集を試みた。Leap Motionは小型であるため、持ち運びも設置も簡単で、また、価格も安価であるため、その点ではよいディバイスであったが、指文字を示している手のデータの読み込みを行うタイミングの難しさや手指形状の誤認識があった。そのため、使用するディバイスの検討を行う必要があると考えられる。 また、本年度は本研究目的とは少し離れるが、指文字認識を利用したロボット操作に関する発表を2件行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は本研究の目的の一つである目視による観察的観点について調査を進めたいと考えているため、アイトラッカーなどを使用し、各指文字のどの部分に視点が集まるのか、つまり、指文字を見ている人はどの部分に注目して指文字を識別しているのかについて研究を進めたい。また、平成29年度はLeap Motionを利用してデータ収集を試みたが、今年度はReal Senseによるデータ収集を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に購入をした機器が予定していた価格よりも低い価格で購入できたこと、また、研究者同士の打ち合わせの回数が予定していたよりも少なかったことにより、残額が生じた。これは共同研究者と学会発表を行った際に、同時に研究打ち合わせができたことに起因している(当初には想定していなかった学会発表の機会に恵まれた)。平成29年度の繰越金は、平成30年度に行う予定の事件に関するデータ収集・分析時に必要な人件費、および、海外での情報収集および国内における学会参加のために有効に使用する予定である。
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