研究課題/領域番号 |
17K02759
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
長谷川 由美 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (40585220)
|
研究分担者 |
本田 久平 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40342589)
田中 省作 立命館大学, 文学部, 教授 (00325549)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 指文字 / 読み取り / 表出 / ゆらぎ / 誤りデータ |
研究実績の概要 |
前年度は指や手の位置を赤外線カメラで撮影、画像解析により割り出すLeap Motionを使用し、18人の被験者の指文字データ収集を行った。Leap Motionは手指形状に特化しており、また、小型で持ち運びも設置も容易であるため便利ではあるが、指の一部が重なったり、隠れたりしてしまうと誤認識の可能性が大幅に上がるという結果となった。 今年度は、ビデオカメラとウエブカメラを使って指文字表出、eye trackerを使用し指文字読み取り時の視線に関する実験を2度行った。1度目は2018年9月であり、指文字初習者43人を対象にしたもの、2019年3月は手話習熟者(健聴者)と聴覚障がい者、計10名を対象としたものである。実験では、指文字の中でも動きがない41の指文字の手指形状を7つの特徴(手の向き、掌の向き、小指の情報、薬指の情報、中指の情報、人差し指の情報、親指の情報)から、誤りが起こった指文字間から、どのような形状的な特徴が間違えられやすいのかを割り出すことを目的の一つとしている。 9月の実験では、被験者がデータ収集の場が「試験」(オムニバス形式で行われる授業の1部)という位置づけであったためか、正解率が非常に高く、誤りは予想以上にすくなかった。誤りデータを分析することにより、いくつかの特徴が観察されたが、指文字の誤りの予測(例:親指が折れているか折れていないかなど)のような形状が原因ではない誤りがあることが確認された。 3月の実験では、9月の実験とは被験者の特徴が異なるため、貴重なデータを得ることができた。現在、データ分析しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている理由の一つは聴覚障がい者もしくは健聴の手話熟練者である被験者集めが難航しているためである。手話初習者の被験者は、大学での指文字学習を終えたばかりの学生などを対象にできるので比較的集めやすいが、聴覚障がい者もしくは健聴の手話熟練者に指文字データ収集の被験者をお願いしていたが、なかなかその機会を得ることができなかった。しかしながら、先日行ったデータ収集(聴覚障がい者もしくは手話に熟練している健聴の手話熟練者が対象)では、被験者の皆さんに実験に関心を持っていただくことができた。今回参加願えなかった方にも、別の日に参加してもらえるように、お声がけしていただけるとのお返事をいただいている。今後も貴重なデータを得るために努力していく所存である。
|
今後の研究の推進方策 |
手話習熟者(健聴者)と聴覚障がい者による指文字データがまだまだ少ないので、引き続きデータ収集を続ける。また、10月には指文字初習者を対象とした実験も予定している。 実験で得た視線のデータを分析することにより、手話習熟者(健聴者)と聴覚障がい者のグループと指文字初習者のグループとの指文字を読み取る際の視線のちがい(特に指文字が表示された直後に手のどこに注目しているのか)について分析・考察を行いたい。これを明らかにすることにより、手話初心者に対して指文字指導を行う際に、「手のどこに注目すればよいのか」を示唆することが可能であると考えられる。 また、手話習熟者(健聴者)と聴覚障がい者の単語レベルの指文字表出のデータをより分析することにより、一つ一つの指文字が連続して表示されることにより、どのように崩れていくのか、どのようなゆれがみられるのかを分析・考察していく。 前年度9月に行った指文字初習者を対象に行った実験では、誤りデータが非常に少なかった。今年度10月にも同様の実験を行う予定であり、誤りデータの量が増えると考えられる。誤りデータを分析することにより、初習者がどのようなところを間違いやすいのかを明らかにし、指文字指導の際に役立てたい。 これらの結果をまとめて、指文字を初めて学ぶ学習者向けのブックレットを作成し、手話への第一歩ともいえる指文字学習をスムーズに始めるための一助になればと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に海外で開催される手話関連の学会への参加、そして指文字に関する小冊子作製部数を増やすことを考え、前年度の経費をやや抑えることにした。
|