研究課題/領域番号 |
17K02759
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
長谷川 由美 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (40585220)
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研究分担者 |
本田 久平 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (40342589)
田中 省作 立命館大学, 文学部, 教授 (00325549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 指文字の表出 / 指文字の読み取り / 手指形状のゆらぎ / 誤りデータ |
研究実績の概要 |
今年度は10月に実験を行い、手話初習者(約110名)の指文字読み取りと表出のデータを収集することができた。 今年度は2度学会での発表を行った。1つは第92回外国語教育メディア学会中部支部研究大会において「部分形状に着目した学習のための日本手話の指文字の新しい類型化」というタイトルで発表を行った。本研究では動きのない41文字を対象とし、手指形状を7つの特徴(掌の向き、手の向き、各指の情報)でとらえ、初習者の指文字の誤りを観察すると、手指の特徴の一部が捨象された際に形状が類似するような関係(部分的形状類似)の指文字間で誤りが多く現れた。そこで、誤りから捨象されやすい特徴を推定し、その元での部分的形状類似に基づいた指文字間のクラスタを得、手話教育担当者の精査を経て、学習時に留意すべき指文字の類型を与えた。 もう1つは、日本教育工学会 2019年秋季全国大会(第35回)において、「多変量解析を活用した日本手話初学者の指文字の誤り分析」というタイトルで発表を行った。本研究では、多次元尺度構成法やクラスタ分析などの多変量解析法を活用し、日本手話の初習者の指文字を分析した。指文字間の形状的類似の他に、学習時に行単位(例えば「あいうえお」「かきくけこ」といった単位)で教えることや、その際の付随的情報などが誤りに関わることが示唆された。それらを考慮したうえで、指文字を表部分形状の観点で分類し、(1)部分形状の類似性が高くない誤り(2)部分形状の類似において孤立している誤り(3)部分形状の類似において孤立している誤りの3つの類型化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
補助事業期間延長承認を申請し、受理されている。研究が遅れている理由は、研究遂行のために必要な手話熟練者及び聴覚障がい者の指文字データ量が充分ではない(協力者数が少ない)というのが第一の理由である。データの集まりが遅く、そのためにデータ分析も遅くなっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度として、今までに行われた分析結果を傾注し、得られたデータの適切な統計的な処理とその観察を最重要課題とし、研究目的の達成に邁進する。 得られた成果を研究会・学会などで発表する予定ではあるが、新型コロナウイルスの状況から、現時点ではどこの学会で発表するかなどの見通しを立てることは難しい。しかしながら、手話関連、社会言語学、第二言語教育関連の学会、コンピュータビジョンの側面と計算機における知能技術やその応用分野の学会などを発表の場として視野に入れている。 指文字は初級の手話講座では必ず教えられることから、地域で開催されている手話サークルや大学などを中心に、社会への情報提供を行い、何らかの形で社会貢献に繋げたい。難解な専門用語の使用や理論の説明を避け、本研究で得られた各指文字に関する情報をわかりやすい図や写真を用いながら、平易な言葉で書いた指文字学習冊子を作成し、配布をするなどの方向で考えている。学習冊子を作成する前に、本年度後期にある手話(指文字)の授業で、作成する内容を利用したハンドアウトを用いて実際に指文字の授業を行い、学生からのフィードバックを得ることができれば、本研究の最終目的である指文字学習冊子がより良いものにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた学会やミーティングが新型コロナウィルスの影響で取りやめになったために、主に旅費を使わなかったため。
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