日本が直面する首都直下地震や南海トラフ地震に備え、外国人住民への避難指示や安全確保のための表現、また被災したときに必要になる情報を「やさしい日本語」で伝える研究を進めてきた。 避難や災害の情報を「やさしい日本語」にして知らせると、その外国人が漢字圏の出身か非漢字圏の出身かに関わらず、日本に住む誰も(80%以上の外国人住民)が行政からの情報を理解して行動できるようにする実証研究を進めている。この研究ではまた、行政や外国人を支援する団体の職員たちが翻訳の手間や誤訳の不安から解放されるため、災害下での情報が迅速かつ確実になることも実証した。「やさしい日本語」での情報は、外国人だけでなく日本人の子供から高齢者まで、またある種の障がいをもった人たちにも伝わることも判明し、災害時の情報を伝える手段として日本人も受け入れやすいことを明らかにした。 当該研究の最終年度(2022年度)ではとくに南海トラフ地震や首都直下地震に備える自治体との協働で、外国人住民や訪日外国人の安全を担保する情報を容易に作り、伝えられるInformation and Communication Technology(以下ICT)化した「やさしい日本語」の社会実装を試みた。コロナ禍で普及したテレワークの仕組みを活用し、互いが遠隔地にありながら外国人支援の団体や個人が連携し合って必要な情報の提供を日頃からオンラインで融通できるようになることをめざした。 一方で災害の発生時には災害下で使えるようネット環境に依存しないICT化した「やさしい日本語」資源により、自治体職員やボランティアスタッフはタブレット等を使った日頃からの「やさしい日本語」資源の活用は広がり、「やさしい日本語」の表現手本を参照して容易に外国人への対応ができるようになった。
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