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2019 年度 実施状況報告書

昭和40年代採録岐阜県方言談話資料作成とその分析

研究課題

研究課題/領域番号 17K02771
研究機関岐阜大学

研究代表者

山田 敏弘  岐阜大学, 教育学部, 教授 (90298315)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード岐阜県方言 / 談話資料 / 文法的特徴
研究実績の概要

昭和40年代の岐阜県各地で収集された方言談話資料110時間分のうち、約10時間分の書き起こしができた。原音声資料の経年劣化による音質の悪さも大きな要因であり、音声補正ソフトを用いて補正をしてみても、音声資料として十分な状態は得られていない。また、書き起こせる能力をもつ研究補助者が限られている。そのため、比較的聞きやすい資料から書き起こしを行ったが、分量が限定的になっていることは、研究申請者自身が学内業務に追われて資料作成に十分携われなくなったという、研究当初の計画にはなかったエフォート分配の変更によるものと考えられる。このように、研究の中核となる音声資料談話コーパスの作成が計画通りには進んでいない。
一方、限られた素材ではあるが、岐阜県方言による談話コーパスは充実をしてきており、2019年度もこの談話資料を基にした考察に公表を行うことができ、その中で岐阜県方言で従来言われてきた原因・理由を表す接続助詞「で」が、実際には終助詞の用法のほうが多く主たる機能となっていることなどをつきとめるなど、談話資料がなければ達成し得なかった成果は挙げつつある。
懸案となっている談話資料の著作権処理についての検討を、資料保管元の岐阜県図書館とも協議し、すでに収録後50年を経過している全員の著作権者に許可を得なければならないこととなった。そのため、具体的な記述を引用せず話者が分からないように配慮するという限定された形でのみ行えることとなった。当初予定してた談話資料の公表も行えないなど、十分な成果には結びつかないが、これも研究成果の一端であると考え、これまでと同様の作業を最終年も行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

科研費補助期間全般において学内の運営に携わり、予想以上のエフォートを学内業務に割くことになった上、プロジェクト遂行上欠かせない方言談話を書き起こせる技能と知識を有する研究補助者が1名しか確保できず十分に業務をおこなってもらうことができなかった。これらのことから、研究は、全般的に遅れを生じている。また、録音資料の劣化が実際には想像以上であり、音声補正ソフトを使用して加工するなど補正に努めているが限界もある。録音資料はこれ以上修正する術がないので、これまでのようにすべてを書き起こして資料化することを放棄し、聴き取れるところを部分的でも資料化していく方向に転換して作業を進めなければならない。
さらに50年前の話者全員に著作権に関する許可を得ることが実質的に不可能であることから、資料保管元の岐阜県図書館と協議の上、公表することは不可能であることになり、談話資料作成・公表は中止せざるを得なくなった。迷ったあげく、個人的な資料として談話資料を作成するという制限の中で研究を進めることとした。

今後の研究の推進方策

研究補助のアルバイターを増やすことも視野に入れ、書き起こしをスピードアップして実行していく予定であるが、原資料の保存状態を考えると、すべての資料の書き起こしは不可能であるとして、地域的に特徴のある資料に限定して作業を進めていく予定である。資料全体の書き起こしから、聴き取りやすい箇所に限定し、特に聞き取りやすい部分に限定して作業を進めることも念頭に置き、より広範な地域の方言的特徴を掴めるよう資料作成を行っていく予定である。
また、著作権処理が現行法下において思うようには進まないことがはっきりしたことから、書き起こした談話資料の公開をすることを諦めざるをえなくなった。内部資料として書き起こした資料を保存し、紙媒体での公開資料作成費用として保留していた費用を、その分資料収集・作成に充てることにより、岐阜県と隣接する地域の談話資料も集めつつ特に文法的特徴の解析に努め、今後は県内外の比較を考察に入れながら、よりいっそう充実した研究成果の発表もできると考えている。

次年度使用額が生じた理由

岐阜県方言に精通し、またワープロも自由に扱える研究補助者の確保が1名しか得られなかった上、その補助者の私的な制約により、方言談話資料の書き起こしが限定的分量のものとなった。これは、原音声資料の音質が想像以上に悪いことも一因である。このことにより、当初予定していた人件費の消化が進んでいないことが、計上した人件費に使用額の差が生じている大きな変更の要因である。また、著作権処理のための事務作業に当てる予定にしていた人件費も、著作権処理がうまく行かないことが決定的になったことから、この点でも人件費の消化が進んでいない。
さらに、主に著作権処理の関係から、科研費研究期間の最後に報告書を編纂する予定にしていたものが、刊行できないか、できてもボリュームのないものになる可能性が大きく、印刷費を予定していた「その他」の割合を小さくする必要がでてきたため、「その他」にも変更が生じている。研究の方向性を8の通り、県外にも談話資料収集を広げるなど微修正することにより、予算の範囲でより現実的な使用を考えていきたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「飛騨美濃古老思い出話」の方言資料的価値22020

    • 著者名/発表者名
      山田敏弘
    • 雑誌名

      岐阜大学教育学部研究報告 人文科学

      巻: 68-2 ページ: 11-20

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 方言授業実践から見えてきたこと2019

    • 著者名/発表者名
      山田敏弘
    • 学会等名
      実践方言研究会
  • [図書] 中文日訳の基礎的研究(一)2019

    • 著者名/発表者名
      張麟声編著・勝川裕子・杉村博文・橋本修・丸尾誠・山田敏弘著
    • 総ページ数
      21
    • 出版者
      日中言語文化出版社
    • ISBN
      978-4-905013-56-3

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公開日: 2021-01-27  

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