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2018 年度 実施状況報告書

明治初期における聖書翻訳と日本語意識の形成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02772
研究機関名古屋大学

研究代表者

齋藤 文俊  名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90205675)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード日本語史 / 聖書翻訳 / 漢文訓読 / 日本語意識 / 近代語
研究実績の概要

本研究は、明治初期という、漢文訓読体が優勢であった時代に、「日本語」がどのように意識されていたのかを明らかにするため、漢訳聖書の影響をうけて翻訳された複数の「聖書」を資料としてとりあげ、漢文訓読語法や当時の俗語などの「やさしい日本語」がどのようにその中に含まれているのかを調査していく。また、同じように漢訳聖書の影響を受けた、近代の韓国(朝鮮)語訳聖書の場合と比較考察していくことにより、多角的に明治初期における「日本語意識」の形成過程を明らかにしていくことを目指している。
2年目である平成30年度においても、明治期における聖書翻訳に関する先行研究の整理を行うとともに、基本資料の収集と整理を行い、データベース作成準備を行った。これらの作業は、3年目の平成31年(令和元年)度においても継続して行っていく。さらに、今年度においては、聖書以外の翻訳小説にも調査範囲を広げ、特に、漢文訓読体で翻訳された『欧洲奇事花柳春話』と、和文体で書かれた『通俗花柳春話』を対照させ、その中で用いられている漢文訓読語法を調査することにより、両者に見られる日本語意識についても考察を行った。その成果の一部は、「明治初期における聖書の翻訳と日本語意識──漢文訓読語法「欲ス」を例に──」(沖森卓也教授退職記念『歴史言語学の射程』2018年11月、三省堂、PP.497-506)として発表した。明治初期には、このように、同一の内容を漢文訓読体で記したものと、「通俗」という角書を付して、易しい文体で記した小説類が複数存在するので、それらを調査することにより、明治初期の日本語意識を解明していくことが可能になる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2年目において、1件の単著論文を発表することができた。この論文は、明治初期に翻訳された聖書に用いられた漢文訓読語法「欲ス」に注目したものであるが、調査範囲を、明治初期の翻訳小説にも広げたものである。同じ内容を、漢文訓読体で記す場合と、易しい文章とで記す場合に、どのように漢文訓読語法が使用されていたのか、またその意識はどのようなものであったのかを明らかにすることができた。このように、今年度は、聖書以外の漢文訓読体の資料の調査結果を参照することにより、明治初期における「日本語意識」の形成過程を多角的に考察していくことが可能になった。

今後の研究の推進方策

3年目となる今年度も、昨年度に引き続き、日本国内において本格的な資料の収集と整理を行うとともに、データベース入力作業を行う。
資料調査については、これまでの研究活動(科学研究費補助金による研究を含む)において調査・蓄積してきた資料を使用するとともに、あらたな資料を発掘するため、東京大学附属図書館・国立国会図書館、また各地の公共図書館などを調査する予定である。また、収集・整理した資料について、それぞれの資料に用いられた語彙・語法が一覧できるようなデータベース入力作業を行う。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 本研究は32年度までの継続した研究であり、3年目の今年度においても、2年目の昨年度同様、下記に示すような費用を必要とするため、次年度 に繰り越すこととした。
(使用計画) 本研究は、1.国内での資料調査、2.データベースの作成、3.研究会の開催、の三点が中心となるものである。 3年目となる本年度は、昨年度に引き続き、国内での資料調査については、本年度において本格的資料調査を行う予定であり、国内調査・研究旅費、および文献 複写費を使用する。また、データベースの作成についても、資料調査により得られた資料の入力作業のために用いるドキュメントスキャナの購入費、およびデータベース作成補助謝金を使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 明治初期における聖書の翻訳と日本語意識──漢文訓読語法「欲ス」を例に──2018

    • 著者名/発表者名
      齋藤文俊
    • 雑誌名

      歴史言語学の射程

      巻: なし ページ: 497-506

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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