研究課題/領域番号 |
17K02774
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
江口 泰生 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60203626)
|
研究分担者 |
駒走 昭二 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (40409917)
久保薗 愛 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (80706771)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ロシア資料 / ゴンザ / タタリノフ / レザノフ / 鹿児島方言 / 下北方言 / 仙台方言 / 欽定全世界言語比較辞典 |
研究実績の概要 |
本研究はロシア資料の全体像を示し、情報を共有し、資料を公表するために、これらの資料を専門とする江口(岡山大学)、駒走昭二(神奈川大学)、久保園愛(愛知県立大学)が協力して資料公表の準備を進めることにあった。 江口は下北方言を反映するタタリノフ資料の解読を継続的に進め、2019.12「A.タタリノフ『レクシコン』注釈9」(Ц~Я)(『岡山大学文学部紀要』72)、2020.3「タタリノフ『レクシコン』の特殊拍(『坂口至教授退職記念 日本語論集』創想社)を発表した。ほかに全体像を示すために、2017.8.9、TASC研究助成報告会「江戸時代ロシア漂流民の記録にみる嗜好品文化の研究」霞ヶ関東海大学オフィスで口頭発表し、これを元に、外国資料としてのロシア資料と洋学資料としてのロシア学資料を分別し、これまでの研究成果やTASC2017報告書の結果を踏まえて、2018.10『日本語学大辞典』(日本語学会、東京堂出版)の「露語資料」を執筆した。 駒走昭二には2020.3「レザノフ資料と方言史研究」『人文研究』200、75-101頁、神奈川大学人文学会)によってレザノフ資料研究へ展開した。 久保薗には2020「駒走昭二著『ゴンザ資料の日本語学的研究』『日本語の研究』16-1)、2019「ロシア資料における格助詞воの機能」(九州大学国語国文学会,九州大学伊都キャンパス)、2019「ロシア漂流民達の日本語を反映する『欽定全世界言語比較辞典』とその改訂版『アルファベット順全言語および方言比較辞典』の資料性の検討」(国語語彙史研究会,神戸女子大学三宮キャンパス)があった。 ここの資料を精査する部分のほかに江口が作成した『友好会話手本集』草稿本のデータを共有し、他の写本との校合作業も進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年にはいって、諸連絡、まとめの段階で、思うように研究発表や出張、会議などが出来なかったのは残念であった。特に『友好会話手本集』はデータベース化が終わっていただけに残念であった。急遽、遠隔会議に備え、研究延長願いを提出し、zoomの有償版やウェブカメラ、ヘッドセットの導入などを進めて、今後に備えることになった。 個々の研究の進展は素晴らしく、駒走昭二は自分の研究を2018.10『ゴンザ資料の日本語学的研究』(和泉書院、314頁)にまとめ、次にレザノフ資料に着手し、同2020.3「レザノフ資料と方言史研究」(『人文研究』200、75-101頁、神奈川大学人文学会)に展開した。 久保園愛は積極的に口頭発表を行い、成果を公表した。従来、研究が進展していなかった『欽定全世界言語比較辞典』の調査を行い、口頭発表した。また2020「[書評]駒走昭二著『ゴンザ資料の日本語学的研究』」(『日本語の研究』16-1)を発表し、ロシア資料研究の現在の到達点を総括した。
|
今後の研究の推進方策 |
江口は2019.6.29(土)開催の九州大学国語国文学会特別講演(九州大学伊都キャンパス イースト2号館D105教室)で「ロシア資料と日本語音韻」という題目で講演し、この内容は『筑紫語学論叢 Ⅲ』(清文堂)、『語文研究 高山倫明退職記念号』に掲載する予定である。特にタタリノフ資料が反映する下北方言はゴンザ資料と体系的に異なっているが、その理由を考え、また古代文献を照応させることによって、新しい知見を得られるように思う。 また駒走昭二は江口がかつて着手したレザノフ資料に着目した。レザノフ資料は対話形式なので資料的にも興味深く、今後の研究が望まれる資料である。 久保薗愛は日本語学会の2020年秋のシンポジウムパネリストとして、文献によって方言を観察するという大きな役目を担っており、その際、ロシア資料などを用いる研究を反省させる予定であったが、春の学会のシンポジウムが秋に延期されたために、次回まわしとなってしまったが、今後の活躍が期待されている。 『友好会話集』の草稿本と清書本を対照させた資料については、今後、なるべく早い時期に公表したいと考えている。またタタリノフ『レクシコン』については東洋写本研究所からの電子画像データの入手が可能になれば、画像と翻刻本文の対照資料を公表したいと考えているが、
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に計画していた研究会発表、出張が感染症対策のために中止となったため。
|
備考 |
東洋写本研究所の職員ワシリー氏を窓口として交渉し、『レクシコン』画像ファイルの許可が会議でOKになったと聞き、値段交渉までようやくたどり着いた。 また江口が作成した『レクシコン』の原稿を送付したが、その後、交渉が途絶えている。日本の図書館のように簡単にいかないのだということを痛切に思い知らされている状況である。なにか良い手、手段、方法はないものかと思案しているところである。
|