研究課題/領域番号 |
17K02778
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
原 卓志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00173063)
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研究分担者 |
梶井 一暁 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (60342094)
町田 哲 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60380135)
刀田 絵美子 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (50632692)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地方語史研究資料 / 文字学習史研究資料 |
研究実績の概要 |
地方語史研究を推進するための新たな文献資料の発掘と、発見された文献を用いた地方語史研究を行うことを主たる目的として、次のような調査研究を実施した。(1)地方寺院に所蔵される古文書・典籍についての悉皆調査、および公的機関に所蔵される古文書・古記録などの調査から、地方語史研究資料を見出し、その言語事象についての分析を行った。また、平行して(2)口頭語的な言語事象が多く見出されると予想される古記録(日記)の解読作業と言語事象の分析を行った。さらに、(3)調査を通して、教育史・地方史などの諸研究分野に資する資料を見出し、当該文献の資料的な価値を分析・考察した。 (1)に関しては、徳島県の荘厳院地蔵寺の所蔵文献についての悉皆調査の約7割を終え、調査の終了した文献について、地蔵寺所蔵文献目録〔第3冊〕(全558頁・私家版)を作成・刊行した。なお、本目録は、鳴門教育大学附属図書館のリポジトリとしてウェブ上に公開している。また、岡山県の金陵山西大寺でも、所蔵文献の調査に着手したほか、広島県の安国寺不動院についても、広島県立文書館作成の目録によって、所蔵文献を概観し、同館所蔵の複製本による調査を行った。 (2)に関しては、徳島県立図書館所蔵『三宅松庵日記』について、安永7年(1778)の6ヶ月分の日記について第一次読解を終えた。また、読解した日記本文から抽出された言語事象について考察し、安永期の徳島における地方語資料としての価値をまとめ、研究紀要に発表した。 (3)については、広く岐阜県・埼玉県の寺院所蔵文献をも調査し、それらを資料として、文字学習の場としての近世寺院の性質について考察を進め、研究集録に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徳島県寺院(莊嚴院地蔵寺)の所藏文献悉皆調査が順調に進み、所藏文献目録〔第3冊〕を作成し刊行したこと。岡山県金陵山西大寺における所藏文献調査に着手し、研究に関連する資料を収集できたこと。広島県安国寺不動院における所藏文献について、広島島県立文書館作成の目録によって概観し、同館所藏の複製本によって調査できたこと。など、上記(1)に関する調査研究は順調に推進することができた。 徳島県立図書館所藏の『三宅松庵日記』について、1年分の解読を目指したが、解読に手間取り、平成29年度には安永7年の6ヶ月分の解読に終わった。ただし、解読し得た部分から抽出された口頭語的な言語事象について考察し、徳島言葉を反映しているものであることが明らかになったことは、特記すべき成果である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通りに、各担当者が地元寺院・地元公的機関の文献について調査研究を行うことを基本としつつ、場合によっては、代表者等が岡山県・広島県に出向き、共同して調査に当たることを考えたい。なお、広島県については、担当者の都合(産休・育休)によって、当初の調査計画を変更し、平成30年度の1年間は直接的な調査は休止するが、平成31年度からは再び実施する予定である。 『三宅松庵日記』の解読は、これまでかなり手こずってきたが、解読を進めるにしたがって次第に軌道に乗りつつある。平成29年度の遅れを取り戻すことを目標として、積極的に進めていく方針である。 また、発見した資料・言語事象について分析・考察し、紀要などを通じて発表することを目指す。
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