研究課題/領域番号 |
17K02779
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
青木 博史 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (90315929)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近代語 / 文法化 / テ形補助動詞 / 名詞句 / 引用句 |
研究実績の概要 |
本年度における研究業績は,以下のとおりである。
①論文「「て+みせる」の文法化」(『構文と主観性』pp.203-220,天野みどり・早瀬尚子編,くろしお出版,2021年10月)。②口頭発表「日本語史における文相当句の名詞化」(第7回「言語変化・変異研究ユニット」ワークショップ・第3回「理論言語学と言語類型論と計量言語学の対話に基づく言語変化・変異メカニズムの探求(東京外国語大学AA研共同利用・共同研究課題)」研究会,オンライン,2021年9月6日)
①では,近代語を特徴づける「テ形補助動詞」の1つである「てみせる」について,まずこの形式が文法化していることを確認したうえで,その文法化の過程を記述した。説明にあたっては,いくつかの共通する意味素性を有した「補助動詞」形式と比較しながら,その共通性に注目した記述を行った。また,その際,「主観性」というキーワードに基づいた説明を加えた。②では,日本語史上において「文」相当を名詞句として用いる3つのケースを指摘し,その意味的・統語的特徴について,中古語・中世語を中心に記述した。特に,「引用句」として名詞化されるケースを指摘した点は重要であり,今後の研究につながっていくものと言える。また,歴史的言語データの調査・分析にあたって,コーパスを利用することの有用性についても,合わせて示した。口頭発表を行った②の内容については,2022年度中に論文として公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来であれば2020年度に最終年度を迎えるはずであった本科研は,2020年度に著書3冊,論文2編等を発表することで,まとめとする予定であった。しかし,新型コロナウィルス感染の影響により,経費については予定通りに使用することができなかったため,2021年度まで延長した。したがって,研究成果については,当初の研究計画からさらに進めたものに着手し始めた段階であるため,具体的な成果としてはやや少ない。しかし,投稿中のものも含め,2022年度にはいくつかの成果発表が見込まれており,おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本科研の研究計画調書を作成した段階で予定していた研究内容は,すべて成果として発表した。現在は,それらの研究を進める中で得られた新たなテーマについて研究を進めている。いずれにしても,「近代語文法の体系的研究」は,自身の根幹をなす研究課題であるので,引き続き関連する研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナウィルス感染拡大の影響により,学会・研究会での発表に使用するための旅費をほとんど使用することができなかった。次年度は,社会状況を見ながら,予定していた旅費は物品費に充てるなど,適切に執行していく。
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