本研究は2017-2019年度の3年間の予定であったが、昨年度、新型コロナウィルス感染症の影響により研究の進展が予定通りとならなかったことから、1年間の延長を申請し、2020年度が最終年度となった。年度の前半は全国的に様々な研究活動が停滞していたが、後半はオンラインを活用した学会・研究会が行われるようになり、本研究も2回の研究発表を経て、4件の研究論文を発表した。 2020年度は、まず連用節のうち条件表現について、昨年度アルバイト補助者により収集されたコーパスからの用例も活用し、改めて全般的に整理・体系化した。その成果は、①「第8章 条件表現」(『現代語文法概説』)として発表した。 また、従来は単独で研究されていた連用節を、他の文法項目との関係の観点から整理することに取り組んだ。具体的には、連用節としては条件節、他の文法項目としては可能表現、敬語表現、授受表現を取り上げ、それらの意味と機能の相互関係について実証的に論じた。その成果は、②「条件表現4形式使い分けルールの簡略化-日本語教育のための日本語研究をめざして」(『日本語文法』20-2)、③「敬語表現と文法 ― 授受動詞の用法を中心に」『待遇コミュニケーション研究』第18巻)、④「授受動詞の使用実態と教え方」(『新世紀人文学論究』第5号)としてそれぞれ発表した。 従来、複文はその分類や構造的な特性の研究が中心であり、他の文法項目との関係については、主節に現れる意味的な共起制約・選好や、アスペクトあるいはボイス(受身・使役)を除いて、積極的には取り上げられてこなかった。しかし、本課題の4年間の研究を通じて、従属節と文法カテゴリー(あるいはそれを超えた語用論的なカテゴリー)の組み合わせを適切に抽出することにより、従属節と文法項目の双方に対し、従来には気づかれなかった意味的・文法的な特徴を見出せることが明らかになった。
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