研究課題/領域番号 |
17K02785
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
安部 清哉 学習院大学, 文学部, 教授 (80184216)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語史 / 新漢語 / 和製漢語 / 翻訳語 / 語基 |
研究実績の概要 |
2020年度は、連語に着目した応用的資料研究を展開し、古典語資料でも連語による視点が新しい成果を生む上で有効であることを実践的実証的に提示できた。具体的には次の2つの異なる時代の資料に対し、和語と漢語という異なる語彙を対象に資料研究を展開した。 時代の1つは古代語である中古・中世の資料である。その内の1つは平安期の和文資料『篁物語』を対象とし、今1つは鎌倉期の和漢混淆文・擬古文ともされる『徒然草』を資料としての文体と語彙との対照研究である。これらの調査では主に和語を対象とし、従来の品詞論的単位ではなく「連語」とした場合に、どのように切り出すのがより有効であるか、その切り出し方が重要なポイントとなることが明らかとなった。もう1つの時代は明治期の資料の漢語語彙を対象としたものである。明治初期の理科教科書である中川重麗著『博物学階梯』(明治10年)を主な対象とし、幕末・近代の新漢語・翻訳漢語・和製漢語を調査した。主に漢語の「語基」に着目し、「漢語語基」が新たな近代的意味することと連動して新たな接辞的機能を獲得し、複合語・連語を新規に形成し、極めて多くの新派生語を派生し、膨大な近代漢語が誕生したプロセスを調査し、1冊の研究書にまとめた。 具体的連語としては、『篁物語』ではカク、カクテ、カクシテ、カカレバ、カカリケレバ、カカルホドニ、カカルコトほか、カ系指示詞の連語全体を対象としたことで文体研究への成果を生んでいる。『徒然草』ではタダシ、サレバ、ユヱ、ユヱニ、ソノユヱハ、トイヘド、トイヘドモ、トイフトモ、モノナレバ、モノナレドの連語を取り上げ、章段と文体差を分析する上で、従来の品詞論的単位からの調査よりも有効であることを具体的に示した。近代漢語語基では『博物学階梯』の索引を作成して利用し、語基「電、館、線、派、度、感、生、活、天、物、機」他による近代的漢語の派生過程と特徴を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症の拡大の影響で、図書館ほかでの資料調査の遅延、アルバイト作業員への依頼や作業などの遅延で、若干計画に遅延している部分があるものの、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果のまとめの年度であるので、和文資料関係の連語研究、幕末・近代の漢語関係の連語研究を中心に成果をまとめる方向で進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大による影響のため。
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