研究実績の概要 |
古典日本語の「連語」「詞辞複合表現」(以下、詞辞連語)の①構成の実態、②通時的変化、③それらの傾向・法則を考究すべく複数の観点・手法・資料について基礎的調査と考察を行い次の実質的成果を公表する事ができた。 ○種々の試行の末たどり着いた成果としておそらく世界発である詞辞連語の検索システム(略称DCCJ試行版)を2022年度に開発できた点は最も大きな成果の1つである。当初の計画では紙媒体の索引や辞書類、既存のコーパスやデータベース(DB)等を駆使して複雑な詞辞連語を収集する目標でそれらも試みたが不十分であったため、自ら検索コンコーダンスを作成する事とした。「日本語通時連語コーパス(DCCJ: Diachronic Collocation Corpus of Japanese)である(著作=于拙・安部,https://dccj.yocjyet.dev/)。今後これを駆使し具体的な詞辞連語の事例収集を行う事が可能となり応用段階へ入る見込みが立った。 ○詞辞連語の応用研究が資料・文体の史的研究に有効である事を『徒然草』の章段別用法の分析によって実践的に証明した(『徒然草』第1部と第2部との相違と中古文体・中世文体の比較等《期間中徒然草関係論文合計6本》参照)。 ○一定の漢語語基に着目しその複合熟語、接頭辞派生・接尾辞派生もある種の複合語形・詞辞連語形式と捉え直す事によって漢語語基の幕末近代での意味変化と新漢語熟語の造語派生が連動する現象である事を新たに見出し、語彙史の中に「語基史」という新視点を提唱し出来た点も大きな成果と考える(《漢語語基史関係、研究書1冊と論文計9本》参照)。 ○さらに詞辞連語表現に着目する方法が文学作品の特徴(文体・文法)の解明に有効である事を、平安朝物語『篁物語』における指示詞・接続詞ほかの連語表現を取り上げ、実践的に示した(《篁物語関係論文計7本》参照)。
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