本年度は前年度から作業を進めている『春秋雑誌会話篇』のデータ化のまとめを行った。具体的には、国立国語研究所の近藤明日子氏のご協力を得て、当該データを国立国語研究所で公開しているコーパス検索アプリケーション「中納言」の仕様に合わせた形で、短単位登録する作業を行った。データ整備、点検をすすめ、年度内に一通りの作業を終えることができた。今後新しい形式(多重形態論情報による本文処理)でのデータ公開に向けて追加の作業を行う予定のため、今年度の公開を視野に入れ引き続き作業を行う予定である。 また、この作業と並行して、同時期の外国人による対訳会話書2種(『Colloquial Japanese』『Conversations in Japanese and English』)のデータ化の作業にも着手した。和文テキストのないこの種の資料のデータ化については、取り組むべき課題も多く、完成には至っていないが、これらを出発点に今後の作業に取り組んでいきたい。このほか、資料閲覧として、東北大学附属図書館への3泊4日の出張を行った。研究成果の発表としては、関連の研究発表1件と論文発表1件を行った。 研究期間全体では、明治時代の口語資料『春秋雑誌会話篇』のデータ化を通して、ローマ字関連資料のデータ化の問題点を把握した。データ化の作業は、最終的には、国立国語研究所「大納言」でのデータ登録作業を一通り終了することができた。 本研究の学術的意義は、従来注目されることの少なかった外国人による明治時代の日本語の実態の一例をコーパスで検索可能な形としてデータ化した点である。電子化が進む国語史研究の中で外国人の日本語研究の利用価値を示す一助となったと考えている。期間中に関連の研究発表3件と論文発表2件を行った。
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