研究課題/領域番号 |
17K02787
|
研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
小柳 智一 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (80380377)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 古典文法 / 助詞 / 主観性 / 類推 / 鈴木朖 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、古代語文法研究の解説的研究のなかで古代語の助詞の考察を行い、その成果を研究論文として刊行した(2021.9)。現在の「古代語文法」の研究と高等学校の「古典文法」に大きな懸隔があることを示し、本研究課題のテーマである副助詞をはじめ、助詞をトピックとして取り上げ、助詞の統語的位置と意味の関係を中心に解説した。これまでの研究をリライトするのではなく、再調査と再検討を行い、現在の研究状況を確認することができた。くわえて教育的な観点から論じることができたのは、意味のある成果だったと考えている。 次に、本研究課題の成果を含む単著『文法変化の研究』(くろしお出版、2018.5)を補うものとして、文法変化に関する一般的・理論的な研究を行った。昨年度の継続で、大きく2つの問題に取り組んだ。1つは、近年多くの関心が寄せられる「主観性」に関する研究である。日本語研究では4種類の「主観性」が紛らわしく併存することを指摘し、整理を施した。この成果は「主観性」をテーマとする論文集の一部として刊行した(2021.10)。もう1つは、逆にほとんど関心が寄せられない「類推」に関する研究である。「類推」に関心が寄せられないのは自明視されているからだが、理論的に見て掘り下げるべき点があることを指摘し、発展させる研究を行った。成果は近年中に刊行予定である。 最後に、継続中の助詞に関する日本語学史的研究の一環として、鈴木朖『言語四種論』(1803年頃成)の「テニヲハ」解釈をめぐる研究を行って来たが、その成果の一部を発表できる段階に至った。近年中に刊行する予定である。そこでは、通説である時枝誠記の解釈に根拠がないことを指摘し、従来とは異なる解釈を示した。なお、鈴木朖の「テニヲハ」の根底にある言語観を明らかにすることは、近世日本語学史の風景を大きく変えることにつながると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症流行に伴う公務と、勤務校での役職の職務に多大な時間を取られ、研究時間を確保することが難しかったのが理由である。ただし、昨年度よりは改善でき、研究を進められたが、完成までには至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
古代語の副助詞について、計画していて本年度に着手した研究を進める。また、助詞に関する日本語学史的研究が進行中で、それを継続して行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
先に説明した事情で研究を計画通りに進めることができず、また、購入予定の書籍と資料の探索に思いのほか時間がかかったのが主な理由である。計画通りに使用し、研究を進める。
|