研究課題/領域番号 |
17K02789
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
齋藤 達哉 専修大学, 文学部, 教授 (90321546)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国語施策史 / 言語政策史 / 日本語教育史 |
研究実績の概要 |
【1.調査の実施状況】29年度計画のうち、(A)岩淵悦太郎の学問と政策へ応用に関する調査・研究については、岩淵旧蔵文法書の調査を行うとともに、岩淵が執筆した文部省『中等文法』について調査を行った。その結果は、論文として公表した。(B)1940-1950年代の言語政策に関する調査・研究については、戦後岩淵が主導した国語研究所「白河調査」を辿るための予備調査を白河市立図書館等において行った。(C)1940-1950年代の日本語教育に関する調査・研究については、釘本久春の御遺族から関連資料群の第2回分を借用し(第1回分は本課題開始前に借用・整理済み)、画像データ化を完了した。また、御遺族へのインタビュー調査も実施した。これらについては、日記をはじめプライベートな情報が多いので公表は難しいと判断した。 【2.研究会の開催状況】29年度計画のうち(D)研究集会の実施については、2回の開催を行った。第1回のテーマは「インタビュー調査の実際」で、平成29年7月8日に専修大学神田校舎で開催。斎藤達哉「日本語の言語政策を記録する―岩淵悦太郎と釘本久春―」、大塚明子「聞きたいことを聞き出すインタビューのコツ」、河路由佳「戦時に関する聞き取り調査での語りの解釈について」の3発表を行った。第2回のテーマは「教科書編纂と言語政策」で、平成30年3月24日に専修大学神田校舎で開催。斎藤達哉「岩淵悦太郎と『中等文法』編纂」、河路由佳「釘本久春研究の新たな視点」の2発表のほかに、情報交換会「教科書編纂と言語政策―岩淵悦太郎・釘本久春をめぐって―」(基調報告:川上尚恵、コーディネーター:河路由佳)を実施。 【3.論文の執筆】29年度は、以下の論文1編を公表した。斎藤達哉「『中等文法』のその後」、『専修国文』(専修大学日本語日本文学文化学会)第102号、pp.1-22、平成30年2月20日
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度に予定していた4項目「(A)岩淵悦太郎の学問と政策へ応用に関する調査・研究」「(B)1940-1950年代の言語政策に関する調査・研究」「(C)1940-1950年代の日本語教育に関する調査・研究」「(D)研究集会の実施」の全てについて問題なく実施できている。 ただし、「(B)1940-1950年代の言語政策に関する調査・研究」のうち、国立国会図書館におけるGHQ関連のマイクロフィルム調査については、次年度に先送りした。これは、より緊急度の高いインタビュー調査の方を急ぐ必要があったからである。 また、釘本のご遺族から借用した資料群(日記・スケジュール帳)、御遺族へのインタビュー調査、第2回研究会での情報交換会によって、次年度に予定している「ハワイにおける釘本の日本語教育の業績調査」の事前準備が予想以上に進展したので「計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、以下のことを実施する。 【1.ハワイでの現地調査】「(A)釘本久春の学問と政策へ応用に関する調査・研究」及び「(B)1940-1950年代の日本語教育に関する調査・研究」を進展させるため、「ハワイにおける釘本の日本語教育の業績調査」を実施する。釘本が太平洋戦争中から取り組んでいた日本語教育事業、戦後の国語教科書の編纂等の成果は、ハワイの日系人向けの日本語教科書編纂に集大成されたと言える。そこで、ハワイに出張し、ハワイ大学での資料調査、ハワイ在住の釘本の教え子へのインタビュー調査等を行う。 【2.白河市における調査】「(B)1940-1950年代の言語政策に関する調査・研究」を進展させるため、白河市において調査を行う。戦後、岩淵悦太郎の主導した「白河市における言語生活調査」は、その後の国立国語研究所の調査スタイル土台となった。「共通語」という用語・概念もこの調査から生まれたものである。しかしながら、この調査については、いまや報告書以外には関連資料が残っていない状況で、埋もれてしまっている感がある。そこで、白河市において岩淵の業績を紹介する取り組みを行うことを通して、当時を知る市民の方の発掘を試みる。 【3.研究会の開催】30年度も研究会を2回開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
30年度には、ハワイでの現地調査(ハワイ大学図書館での資料調査、ハワイ大学の日本語学校における釘本久春の教え子(ハワイ在住の日系人)へのインタビュー調査)を実施することにしている。29年度に研究が予想以上に進展したことにより、ハワイ現地での調査項目も当初予定を上回る量が見込まれる。そこで、調査に多くの人員(研究協力者)を投入するために、29年度の研究補助者の雇用を差し控えることで、意図的に残額を生じさせたものである。
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