1.外来語表記のゆれの実態と外来語の発音のゆれの実態とを大規模コーパスを用いて把握するとともに,両者にずれがあるのか,あるとすればどの程度のずれなのか等を明らかにするため,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』と『日本語話し言葉コーパス』とから外来語を抽出した。その抽出した用例を基に,用例データベースの構築作業を継続した。 用例データベース構築作業が当初計画から遅れていることを踏まえ,比較的容易に用例を抽出できていることが確実な語末長音と語中長音とを主たる対象としてデータ整備を継続した。語中長音については,形態素解析時の誤解析を除去する作業を中心に行い,分析の基礎となるデータの確定に努めた。なお,語末長音・語中長音とも,昨年度と同様,固有名詞を対象外とすることで作業効率の向上を優先した。 2.コーパスを活用した外来語表記研究に関する成果の普及のため,『コーパスで学ぶ日本語学 日本語の語彙・表記』(朝倉書店)を刊行した。編集担当として全体の統括を行うとともに,「第1章 総説」「第5章 和語・漢語の表記」「第6章 外来語の表記」を執筆した。第6章では,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』から抽出した外来語の用例に基づいて長音表記のゆれ,連母音表記のゆれなどの全体的な傾向について概観した上で,国が定めた外来語表記の基準「外来語の表記」にどのような規定が見られるか,さらにその規定と表記のゆれとの関係についても解説した。さらに,連母音表記のゆれと意味・用法との関係について「ディスプレー」「デー」を例として解説した。なお,発展課題として本研究計画の成果を踏まえて,外来語表記のゆれと発音のゆれとの比較分析というテーマを提示した。
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