研究課題/領域番号 |
17K02799
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
飛田 良文 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 名誉所員 (40000418)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外来語 / 小説 / 表記 / 変化 |
研究実績の概要 |
明治維新以降、日本は、西洋文化の制度、習慣、概念をおびただしく取り入れた。西洋の文化は、言語面において、あるものは翻訳語として、あるものは外来語として導入された。後者は、日本語に類似の概念を持つ言葉がないために、外国語の発音を日本語の発音に置き換え、漢字、カタカナ、ひらがなで表記して導入したのである。外来語史の研究は、未開拓の分野であって、分析の方法もまだ確立していない。そこで、幕末から今日に至るまでの、日本語における外来語の受入れとその定着の過程を明らかにするために、外来語のデータベースを作成する。 本研究は、明治以降の小説100冊の全数調査を行い、原語・表記・固有名詞・和製語・語構成・意味分野の観点から分析を行う。完成の曉には、外来語史研究のみならず、日本の近代化を反映するデータ集とする。外来語の実態については、原語・表記・固有名詞・和製語・語構成・意味分野を調査し、データベースの情報として記入する。本研究では、以下のような視点から計量的調査を行う。 1.原語が移入された時期を明らかにする。それによって辞典の語源欄にみられるゆれを決定できる。 2.表記が、漢字・片仮名・平仮名で、どのような割合で使用されているか、国定読本では、漢字表記・平仮名表記・片仮名併記が認められている。いつ、片仮名へ統一されていくのか。 3.語構成は、純外来語→混種外来語→和製外来語へと発達していくことが証明されるのではないか。例えば、名詞の動詞化に伴う変化(サボタージュ→サボ→サボる)や名詞の形容動詞化(スペクタクル→スペクタクルな)など。 4.外来語が、日本語に移入されたのは、どの時期に、どのような意味分野かであったか。『分類語彙表』を基準にして分類する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
明治期版本の読解と入力に時間がかかった。また大正後期から昭和初期にかけて、外来語の頻出度があがり、入力件数が増加したほかに、旧かな旧漢字および読みがなの入力などに時間が割かれた。昭和戦後以降では、更に語数が増し、時間を割かれているほか、外来語として採取すべきか検討するなどの手間が増えている。 また、原語特定、原語つづり入力、語彙分類番号などを、作業補助者に任せる関係で、データベースに記載する項目の見直し、作業者間の使用ソフトの互換性等、技術的な問題が増え、全体の作業に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
作業補助者を交えて数回の打ち合わせを行ない、委託する作業内容は、おおむね理解してもらえた。外来語の原語特定は、複数の外来語辞典に依っているが、カタカナ表記からだけでは、原語が英語由来かオランダ語由来かなど、判別しがたいものもある。代表者に判断を委ねるために、あとから検索しやすい形をとるなどの工夫をすることになった。 基本となる用例集ができ次第、分析を行ない、論を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
基本となる用例、原語、語彙分類など、入力作業が終了せず、謝金および印刷費用(その他欄に計上)が先送りになったため。
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