研究課題/領域番号 |
17K02808
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 智之 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (20241739)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分詞構文 / 否定辞 / 動詞移動 / CP領域 / 動詞第二現象 |
研究実績の概要 |
本年度は、英語の分詞構文における否定辞の分布の歴史的発達について、Haeberli and Ihsane(2016)における動詞移動の分析を援用し、分詞構文の構造変化に関連付けて説明することを試みた。まず、分詞構文における虚辞thereの生起、項前置、wh移動に関する証拠に基づき、分詞構文は14世紀中ごろまでに機能範疇CとTを伴う構造を持つようになったが、18世紀にCP領域を失い始め、19世紀以降はTPのみからなる構造に一本化されたと提案した。 14世紀までは定形節において動詞第二現象がある程度の頻度で観察されるため、分詞構文においてTが値未付与のV素性(以下、[uV])を持つ構造に加えて、定形節との類推により、Cが[uV]とEPPを持つ構造も可能であったと考えられる。前者の構造からはnot-V語順、後者の構造からは独立分詞構文において動詞が主語に先行する語順が派生される。その後、15世紀になると動詞第二現象が衰退し始めるが、それによりCが[uV]のみを持つ構造が利用可能となり、その構造において動詞がTまで移動する必要があるため、15世紀にV-not語順が出現したことが説明される。そして、17世紀には動詞第二現象が消失に向かうが、これはCが[uV]とEPPを持つ構造が失われたことを意味する。それに伴いCへの動詞移動が不可能となり、動詞が主語に先行する独立分詞構文が消失したという事実が説明される。最後に、18世紀中に分詞構文はCP領域を失ったが、V-not語順はCが[uV]を持つ構造から派生されるので、この時期にV-not語順は消失し、not-V語順のみが残ったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で学会や研究会が遠隔となり、研究課題についての情報・資料収集や意見交換などが予定通り進まず、英語の非定形節のうち、動名詞構文における否定辞の分布の歴史的発達に関しての研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
英語の非定形節のうち、不定詞節と分詞構文については研究を終えているので、今後は残る動名詞構文における否定辞の分布に焦点を絞る。データ収集は始めており、英語史を通じて動名詞構文がCP領域を持つことはなかったという仮定に基づき、否定辞の分布の歴史的発達について説明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、予定していたすべての学会出張が取りやめとなったため、期間延長をせざるを得なくなった。研究課題に関係する図書、および消耗品の購入に充てる予定である。
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