研究課題/領域番号 |
17K02810
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南 英理 (田中英理) 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40452685)
|
研究分担者 |
吉本 真由美 実践女子大学, 文学部, 助教 (60580660)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | スケール / 比較 / 同等比較 / 極性 |
研究実績の概要 |
英語では比較表現の意味を記述する上で、(i) 程度項の量化、(ii) 比較節における最大値オペレータの存在が仮定されている。(ii)のオペレータは、比較節内で、程度の集合が形成され、その中の最大値を取り出す操作を行う。したがって、(1) John is taller than Bill (is). のような比較文は (1') ジョンの背のたかさ > Billの背の高さが到達している値の集合の最大値 という意味を表すと理解できる。最大値オペレータが存在していることは、英語では(2) *John is taller than no one isn't. が許されないことから支持できる。「誰も到達していない値の集合の最大値」が定義できないからである。この現象は優劣比較に限らず、同等比較(as...as)にも適用できる。 一方で、日本語の比較表現では、(英語と異なり) 程度の集合の形成がなされないのではないか、という議論がある。前年度までは日本語の優劣比較文を対象に、日本語でも上記の「否定の島」現象が観察できることから、程度の集合の形成や最大値オペレータの存在を否定できないのではないかという結論に達した。今年度は、これを受けて、同等比較を検討した。同等比較では、「太郎は誰も飲んだことがないくらい・ほどたくさん水を飲んだ」のように比較節に否定が来ることができる。こうした現象は、最大値オペレータがこうした現象に関わっていないと考えることができることを示している。同等比較においてはこうした最大値オペレータがないと考えられる言語が他にも報告されている。前年度までの成果を受けて、最大値オペレータは、言語間の差異を捉えるパラメタというより、比較を表す表現(er than, as ...as, kurai, hodo)それぞれについての語彙的なパラメタと考えられると結論付けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、同等比較について検討し、否定の島の現象について、優劣比較との違いを明らかにすることができた。概ね順調と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
・日本語の「ほど」に加えて「くらい」について検討する。 ・比較節におけるその他の最大値オペレータの関わる現象(モーダルの存在など)を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID19により、すべての学会がオンラインとなり、研究発表のための旅費を必要としなかったため。 次年度以降、発表論文の英文校閲などに当てる。
|