研究課題
本年度は、本研究課題の最終年度である。当初の研究の目的は、段階形容詞や比較文の統語的・意味的性質を記述するために導入されている「程度」について、統語論・意味論上、比較文において程度の集合を作る操作がないという通言語的パラメタを英語との比較を通じて日本語において検証することであった。本研究では、この課題について、(i)日本語のヨリ比較文において、日本語では程度集合を作らないことの根拠の一つとされてきた否定の島について、先行文献で議論されたデータより広く検討することを通じて、ヨリ比較文でも否定の島の効果が見られることを示し、(ii)ホドやクライを含むような同等比較文では、否定の島の効果が見られないことは、集合の最大値を返すオペレータの有無によって捉えられることを示した。したがって、本研究課題における結論として、日本語において程度の集合を作る操作が「ない」というパラメタを支持する証拠はない、ということがわかった。
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Measurements, Numerals and Scales
巻: - ページ: 289-306
10.1007/978-3-030-73323-0