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2019 年度 実施状況報告書

英語心理動詞の発達に関する史的統語論研究:項の具現化と文法化の観点から

研究課題

研究課題/領域番号 17K02812
研究機関島根大学

研究代表者

縄田 裕幸  島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00325036)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード統語論 / 英語史 / 心理動詞
研究実績の概要

今年度は、主として英語心理動詞の発達にかかわるパラメター変化と文法化の相互作用に関して研究を行なった。具体的には、英語でV not型否定文がdo not V型否定文へと置き換わった16世紀半ばに、パラメター再設定による下方推移であるV-to-T移動の消失の圧力と、動詞から助動詞へと統語構造を漸進的に変化する文法化の圧力が同時に個々の動詞にかかったとき、それぞれの動詞に現れた影響の違いとその理由を調査・分析した。
know, doubtなどの一部心理動詞は動詞移動の消失に抵抗して後期近代英語までV not型否定文が用いられ続けたが、最終的には動詞移動の消失の圧力に屈してdo not V型の否定文に移行した。他方で、同じく話者の心理的態度を表すdareとneedでは動詞移動消失の圧力に文法化が十分に抵抗し、現代英語において助動詞的な用法を確立した。コーパス調査とRichards (2010) の「必異性条件」などに基づく理論的分析の結果、know/doubtとdare/needが異なる方向に変化したのは、両者がとりえた補文構造の違い、具体的にはコントロール補文の選択可能性に影響されたものであると結論付けた。
また、上記の研究で得られた知見を名詞句の統語変化に応用することも試みた。事例として取り上げたのは、something型複合不定代名詞の発達である。現代英語の複合不定代名詞が形容詞の後置修飾のみを許すという特異な性質に関して、単独用法がX0レベルの語であるのに対して後置修飾用法がXPレベルの句であると仮定することで説明を試みた。またコーパス調査によって、複合不定代名詞が数量詞句から発達した歴史的過程を明らかにし、X0タイプが数量詞句からの完全語彙化によって、XPタイプが不完全語彙化によって、それぞれ生じたものであると論じた。この成果は2020年度中に出版される予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題の成果を含む共著書を2019年度中に出版予定であったが、共著者の都合等により執筆期間が延長された。それにともない研究期間も1年延長し、2020年度の出版を目指して準備を進めているところである。

今後の研究の推進方策

研究最終年度である2020年度は、本研究のこれまでの成果の妥当性を検証するために調査対象を拡大して追試を行なう。具体的には、古英語・初期中英語の心理動詞構文でも用いられた空主語の認可と消失について、先行研究をふまえた追加調査と分析を行なう。
初期英語が空主語を許したか否かについては研究者によって立場が異なるが、近年の計量的研究(Rusten (2019))によって記述的な全体像が明らかになってきた。それによれば、初期英語で空主語は観察されるもののその生起率は全体的に低く、さらに個別のテキストや統語的環境、人称解釈によって空主語の生起に非対称性がみられる。また、最近の通言語的な空主語の研究によれば、空主語の解釈には談話の情報構造が大きく関わってきていることが明らかになってきた(Frascarelli (2007)など)。このような状況をふまえ、本研究では初期英語を「希少空主語言語」として位置づけ、以下の3点を明らかにする。(i) なぜ初期英語では空主語の生起率が低かったのか。(ii) テキスト・統語環境・人称解釈による非対称性がなぜ生じたのか。(iii) なぜ空主語は英語から消失したのか。これらを明らかにすることで、空主語が関与した英語の心理動詞構文(非人称構文)の発達に関する本研究の妥当性を裏付けたい。

次年度使用額が生じた理由

「現在までの進捗状況」でも触れたとおり,本研究課題の成果を含む共著書の執筆期間が延長された。そこで,研究費を計画的に使用して研究期間を1年延長し、2020年度中の出版を目指して準備を進めることにした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 図書 (1件)

  • [図書] コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論22019

    • 著者名/発表者名
      小川芳樹
    • 総ページ数
      429
    • 出版者
      開拓社
    • ISBN
      978-4-7589-2276-0

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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