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2017 年度 実施状況報告書

進行形の意味機能を巡るState概念の精緻化に関する通時的・共時的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02813
研究機関九州工業大学

研究代表者

後藤 万里子  九州工業大学, 教養教育院, 教授 (20189773)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードstative概念 / 進行形 / 規範文法 / 近代英文法 / 同質性 (homogeneity) / 有界性 (boundedness) / Lindley Murray / Noah Webster
研究実績の概要

平成29年度は、当初計画通り、進行形の意味機能を巡る「state概念輪郭の追求」という観点から、これまで収集してきた活版印刷英国導入開始以来現在迄の英語文献、英文典・言語哲学書・英語研究書・文法研究資料・使用実態資料等を再分析した。その研究成果をまず第14回国際認知言語学会 (エストニア、タルトゥ大学、7月)で発表した。そこでは英文法記述・英語記述・実際の使われ方を根拠にLangackerの認知文法においてStateの解釈を受ける事態として範疇化されている概念定義を再検討する必要性を実証した。次に第15回国際語用論学会(英国、ベルファスト、7月)で、英文法記述の中でもノア・ウェブスターの見解に焦点を当て、その妥当性を論証した。本発表は興味関心を共有するオーディエンスからの好意的賛同を得、新たな方向性への提案も受けることができた。その後第23回国際歴史言語学会 (米国、テキサス州立大学サンアントニオ校、8月)で、英米社会における英語やラテン語文典の役割、及びその記述における進行形とState概念との関係の変遷について発表を行った。
7月の二つの学会の間に、大英国図書館及びオクスフォード大学Lady Margaret Hall図書館へ赴き、他では閲覧不能の文献資料を調査しタブレット端末やカメラで収集した。9月には、それまでの集積した資料、就中19世紀末から20世紀中葉迄のもの、特にLindley Murrayの資料でこれまで整理・分析が行き届かなかった部分について照合確認作業を行った。
その成果発表として、ヘブライ語文法用語に端を発し、ComrieやLangackerの定義によるstateは進行形と相容れないものではないと結論し、一部を「ことばのパースペクティヴ:中村芳久教授退官記念論文集」の推敲部分に含め、他の部分を福岡認知言語学会記念論文集論文として執筆中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)進行形との関連において輪郭も明確とは言えないまま認識される様になったstative概念を、認知言語学的に再検討することにより、今日学界・英語教育界で殆ど誰も疑うことのない「進行形とstativeを表す動詞は相容れないという制限規則」を切り崩す為の素地と論拠が、少なくとも3つの学会発表の場におけるオーディエンスにとって説得力のあるものとして受け入れられたことは、本研究にとって一つの成果であった。英語だけでなくドイツ語やスカンジナビア諸語などゲルマン諸語を母国語とする人々の興味関心が高いこともこれまでの研究を裏付けるものであった。
2)Lindley Murrayの初版から40版迄毎回続く改訂における加筆修正を、これまでよりシステマチックに解析調査し、進行形を巡るstative概念記述の矛盾を発見した。
3)進行形と相容れない事態を総称するものとして用いられてきたstativeという用語の確立は比較的新しいことがわかかった。それ故、今期は近現代英文法における単純現在形用法観察記述に見られる、Activity, Imperfective, Atelic, Continuous, Durational, Unbounded, Habitual, Gnomic, Generic, Structuralなどの関連諸概念とstative概念との関係整理、また古英語の拡充形や中英語期の進行形とされる構文の使われる文脈から考えられる意味の調査も進めることができた。

今後の研究の推進方策

これからの論文執筆、その推敲及び推敲過程におけるピアレビューコメントを通して、様々な形で進行形に関わる現象に高い関心を寄せてきた研究者との情報交換により、「状態進行形」、即ちstativeと解釈できる動詞が実際に使われている進行形、の実例におけるV-ingのVをnon-stativeではなくstativeと主張する論拠を強固にする方策を模索する。
例えば、I'm liking itのlikeには有界性が認知されstativeではないとするのがLangacker (1991: 208; 2008: 156)などで示される認知文法の見解であるが、有界性は必ずしも関係しない場合、有界性を示唆するとは考えにくい状況におけるI'm liking itの類いの使用例を、これまでより通時的・共時的に広い範囲で開拓する。それらの具体例を使用文脈と併せて分析することを通して、stative概念の透明性をあげる。stativeを同質性において捉える方向で筋の通った定義を定め、進行形と両立すると捉えることが進行形現象を最も自然に説明付けることに繋がると現段階では考えており、そのための様々な論拠を今年度は揃えていくことになる。
今後も、近・現代英文法記述におけるstative概念その関連概念の明確化を追求し、説得力を高める論拠を固め得る材料として小説や聞き取り調査、web検索を通して得た実例を文脈と共に分析し、古書、およびこれまで収集してきた資料を新たな視点で再調査する。

次年度使用額が生じた理由

残額が少額であったため、購入を計画していた書籍の価格に満たず未使用残額が生じたが、次年度早々に購入予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Profiling Stative Situations in its Relationship with the Progressive2017

    • 著者名/発表者名
      Mariko Higuchi Goto
    • 学会等名
      The 14th International Cognitive Linguistics Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Noah Webster’s View on the Progressive and its Relationship with Stative2017

    • 著者名/発表者名
      Mariko Higuchi Goto
    • 学会等名
      The 15th International Pragmatics Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Has the English Progressive Truly Resisted a Stative Construal?2017

    • 著者名/発表者名
      Mariko Higuchi Goto
    • 学会等名
      The 23rd International Conference on Historical Linguistics
    • 国際学会
  • [図書] ことばのパースペクティヴ2018

    • 著者名/発表者名
      上原聡、大橋浩、濱田英人、樋口万里子、堀田優子、村尾治彦、山田仁子、他 全42名
    • 総ページ数
      552 (著者分12頁)
    • 出版者
      開拓社
    • ISBN
      978-4-7589-2254-8

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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