研究課題/領域番号 |
17K02813
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
後藤 万里子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (20189773)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 状態進行形 / 状態性 / 進行形 / 英国18世紀書簡 / エピソード文体 / 話し言葉 / V-ing形 / 進行形の歴史 |
研究実績の概要 |
21年度は、前年度に引き続き、18 世紀の多様な英語活版印刷物のPDFフルテキストアーカイブECCO (Eighteenth Century Collections Online)から、実在した人物の声を反映する書簡を中心に、コンテクストを読み込みつつ目を通し、the be+V-ing構文(通称進行形)を拾い集め続けると共に、使われ方を考察した。(進捗状況は、現時点で2020年度までに終了する計画だった分の6割程。)前半は、4月-7月の調査研究において、特に、状態進行形(一般に状態動詞と呼ばれてきた動詞を現在分詞の語幹とする進行形、及び、これまで確立してきた「状態」の定義に照らしても「純粋に状態を表していると十分考えられる進行形」)について、近現代を通じた先行研究が観察し言及してきた歴史的データや事実を、改めて18世紀の使用実態と比較しつつ、再検討した。
その結果として、進行形の語用論的観点からみた様々な使用の場での役割が、現代も含め歴史を通じ一貫し、進行形の根幹的意味と核機能と符合することを論証できた。就中、18世紀文献における、話し言葉を反映する度合いが高いと考えられる、知人との近況に関するのやり取りなどの内容を中心とした書簡においては、進行形自体も、上記の意味での状態進行形も、現代の話し言葉におけるものと、ある程度近い頻度で使われていた可能性を、現在まで得られたデータ示唆することを確認した。
以上を、6月27日-7月2日にオンラインで開催された国際語用論学会において発表した。それと共に、BNCコーパスの1994年から2014年の話し言葉英語における、状態動詞の単純形と対比させた進行形での使用比率から見える状態進行形の様相が、18世紀の書簡における使用実態と極めて類似している点を論文に纏め、『認知言語学の未来に向けて:辻幸夫教授退職記念論文集』に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
就業時間内に研究時間を確保することが困難な時期が長かったため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、21年度までの18世紀書簡集資料調査でやり残した部分を完遂し、集積したデータを整理・分類し、学会発表及び執筆論文の議論に資する形にする。次に、前後の世紀の書簡へも調査対象を広げる。18世紀に刊行されてはいるものの実際には17世紀に書かれた書簡、においても18世紀に勝るとも劣らない頻度で、現代の使われ方と極めて近い進行形が見られたからである。更に、22年度からの新規研究課題である現在時制表現(単純現在形・現在進行形・現在完了形)における状態性を追求する中で、単純現在形と現在進行形、及び現在分詞と原形の機能の棲み分けのあり方探求を同時に進め、2つの課題研究を有機的相乗効果が生み出せるように進めたいと考えている。本課題研究で、22年度で焦点を当てるのは、always, continuallyのついた進行形である。コーパスによる先行研究では、このタイプは20世紀に発達したのではないかと示唆されている。だが、ここまでの調査で、18世紀においても書簡中の進行形の中では少なくない点に注目し、論考を纏める。加えて、所謂動作動詞が使われてはいても、基本的に状態の一種である事態を表すhabitual progressiveも多い点も鑑み、こういった進行形を考察し、分析結果を更に纏める。今年度は、ECCOを再度年間契約し、ECCO及びEEBO更なる資料の読み込みや、大英国図書館や米豪等の大学図書館に出向き、資料の発掘に中心を置く。その結果をこれまで収集してきた資料文献と併せて考察し、国内外の学会で発表しフィードバックを得る計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により今年度予定していた資料収集の為の渡英が叶わなかった為
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