研究課題/領域番号 |
17K02816
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
漆原 朗子 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00264987)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分散形態論 / 統語論 / 音韻論 / インターフェイス / オノマトペ |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、オノマトペの述語化に関する分析の精緻化を行った。その成果をふまえ、日本英語学会第37回大会において、連携研究者である多田 浩章氏(福岡大学)、渡辺 明氏(東京大学)、および木村博子氏(千葉工業大学)・成田広樹氏(東海大学)とともに『統語-音韻インターフェイスに必要な情報の表示をめぐって(On the Representation of Information Necessary for the Syntax-PF Interface)』と題するシンポジウムを開催した。4つのシンポジウムのパラレルセッションであったが、全参加者の40%強にあたる約130名の参加者を集め、活発な議論を展開することができた。 また、ICU Working Papers in Linguistics vol. 10に "A Note on Velar Nasals: Representation and Derivation in Distributed Morphology", と題する論文を発表、日本語音韻論の主要なトピックの一つである鼻濁音の変異を先行研究では指摘されていない事実を紹介して再考し、分散形態論の枠組みでの分析を提案した。 分散形態論にとっても重要な統語的語(syntactic words)と音韻的語(phonological words)の対応について、"On the Wordhood of Japanese Complex Predicates"と題する論文を発表した。 さらに、自身が運営委員を務めるMorphology and Lexicon Forum 2019の招待講演「日本語名詞述語文の構造と意味再訪」(金水 敏氏(大阪大学))に着想を得て、「博多方言「バイ」「タイ」の統語的分布と機能の対応」と題する発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連携研究者および若手研究者と共に英語学分野で最大の学会である日本英語学会大会でシンポジウムを開催し、多くのフィードバックを得ることができたから。 分散形態論の枠組みを用いて、その理論の検証にも重要な言語学上の現象に関する論文(単著)を2点執筆・刊行したから。 自身が長年研究しているコピュラ文に関して、情報構造の観点から東京方言にはみられない形態を有する博多方言の事実に基づき、分散形態論の知見を取り入れた分析の端緒につくことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
博多方言「バイ」「タイ」の分布に関する分析をより精緻化して、論文としてまとめる。 英語の転換(conversion)に関する膨大な先行研究を分散形態論の視点から批判的に検証し、新たな分析の可能性を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月6日(金)開催予定であった上智大学国際言語情報研究所主催言語学講演会「線状化と韻律範疇」(土橋善仁氏(新潟大学))が新型コロナウィルス感染拡大により延期となり、旅費の執行ができなくなったため。 また、3月下旬に予定していた国立国会図書館での資料閲覧・収集も大学からの東京出張自粛要請により、旅費の執行ができなくなったため。 2020年度、新型コロナウィルスの状況に鑑み、資料閲覧・収集を行う予定である。上智大学国際言語情報研究所主催言語学講演会については、日程等が決定し、都合が合えば参加する予定である。
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