研究課題/領域番号 |
17K02817
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
市川 泰弘 日本工業大学, 工学部, 准教授 (00223090)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 認知構造 / 構文発達 / 言語習得 / 働きかけの希薄化 |
研究実績の概要 |
今年度はまず本研究で扱う再帰代名詞を含むGET構文に関して19世紀以前に発刊された文法書ではどのように扱われているかを調査した。Ballokar(1580)ではgetを用いた用法が示されていたが、再帰代名詞を伴う例は示されていなかった。Murray (1816)では2重目的語を取る例文、副詞、名詞等を取る文は示されていたが、再帰代名詞を伴う例文は生じていない。Cobbett (1819)では文章中にget(過去形、分詞も含む)が23生じ、名詞、副詞、過去分詞形容詞、前置詞等を伴っていたが、再帰代名詞を伴う例文はなかった。Pinneo(1869)では通常のgetの用法への言及はあったが、再帰代名詞を伴う用法は示されていなかった。Maetzner (1874)では名詞、形容詞、過去分詞形容詞が生じる例が示されていたが、再帰代名詞を含む例文は生じていなかった。このことから19世紀までの文法書では再帰代名詞を含む構文は型式としては認識されていなかったと言える。 次にOEDに記載されているgetを含む例文の中で再帰代名詞を伴う文を抽出したところ、125例あった。最も早い段階で生じたのは1662年にget himself out of sightという表現であった。再帰代名詞の後に生じる範疇は名詞句(28例)、前置詞句(23例)、不変化詞(11例)、形容詞句(4例)、動詞の過去分詞(形容詞用法も含む:59例))があった。再帰代名詞別ではhimselfは56例、herselfは19例、myselfは15例、yourselfは2例、themselvesは15例、ourselvesは6例、yourselvesは1例だった。 また、語彙拡張に関わる主語名詞の「希薄化」に関わる論文を中心に理論考察を行い、言語習得との関連から範疇(特に不変化詞)の構造に関するとらえ方に関して鈴木(2017)等を参考に考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀までに発行されて入手できた文法書でのgetを含む例文の調査は終了し、OEDに掲載されている再帰代名詞と動詞getを含む例文の調査も終了した。さらにA Corpus of English Dialogues 1560-1760でのgetの生起状況調査も開始した。理論的な部分としては形容詞、動詞の過去分詞、不変化詞の3つをget+再帰代名詞+X構文のXに生じる範疇と考え、それぞれの範疇の認知構造がどのようなものであるかを考えた。特に鈴木(2017)が主張しているように、不変化詞を言語習得の観点から動詞として考え、市川(2018b)では不変化詞の認知構造を動詞と同じ認知構造としてとらえて分析を行った。以上の状況からおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
不変化詞・形容詞・動詞の過去分詞の細かな意味とその認知構造を再考し、再帰代名詞を含むget構文を資料からさらに抽出する。まず、バージニア大学電子図書館など、インターネットを介して電子図書館に所蔵されている現在までの文学作品、雑誌、研究書などにおいて当該語彙のそれぞれの意味用法がどのように生起しているかを年代順に調査し、その頻度についてまとめる。また、その他のNew York Timesなどの新聞のデータベースやHere's Healthなどのイギリスで発行されている雑誌を電子データに変換して、各語彙がどのように生起しているかを調査する。次に大英図書館に所蔵されている文学作品などとは異なる日常生活で使われていた英語資料(私信としてのレターや新聞・大衆雑誌など)の中で閲覧が制限されている資料を現地で閲覧・収集する。また、現在使用されている言語資料としてBritish National CorpusやCollins Wordbanksに納められているデータの中から当該構文を抽出し、それぞれの特徴を明らかにする。さらに認知言語学や拡張理論の「拡張」に関わる原理を精密化するために下記の文献やその他の文献を収集し、この研究に必要な理論の確立を進める。 Ten Lectures on the Elaboration of Cognitive Grammar (Distinguished Lectures in Cognitive Linguistics) Theories of Brain Function and the Nature of Vision (Springer-Verlag)
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は資料調査等に関わる人件費を使用しなかった。これは次年度イギリスでの資料調査補をイギリス滞在中の協力者にお願いし、さらに帰国後の文献内での当該構文の抽出および選別作業を協力者に依頼するためである。
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