研究課題/領域番号 |
17K02817
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
市川 泰弘 日本工業大学, 共通教育学群, 准教授 (00223090)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 認知構造 / 構文発達 / 言語習得 / 働きかけの希薄化 |
研究実績の概要 |
まずHere’s Health 80冊(1997年から2017年)をPDF化し、get + oneself + X構文の生起状況をデータ分析プログラムVIVOを用いて行った。次にイギリスの大英図書館およびスコットランド国立図書館で閲覧可能な英語資料を収集した。両図書館では1377年から1913年までの文献を収集したが、PDFとして閲覧可能な文献(9007ページ)を収集し、直接閲覧可能な文献(The Gentleman’s Magazineほか)はデジタルカメラを使用して画像として9746枚収集した。これら資料のうちPDFの資料でget+再帰代名詞+Xという型式の文がどのくらいあるか調査した。加えて今まで電子図書館等からダウンロードした資料(1200年から2000年)での当該形式の文の生起状況も調査した。また収集した画像資料をPDFへ変換する作業も開始した。次に再帰代名詞の後に不変化詞が来る構文に着目し、その中でV + 再帰代名詞 + up構文に焦点を当て現在の生起状況をBritish National Corpusを利用して調査し、1084例が確認された。(myself:118、yourself:90、himself:386、herself:188、ourselves:33、yourselves:3、themselves:182、itself:87)さらに通時的観点からCorpus of Historical American Englishでupが共起する文の生起状況を調査し、8557例(1810年代から現在に至るまで)が生じていた。これらのデータから当該構文の拡張が再帰代名詞の働きかけの希薄化によって生じ、通時的資料での構文の生起のずれと一致していることを金沢大学英文学会で発表し、動詞+再帰代名詞+downの型式の拡張について調査を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共時的資料としてBritish National CorpusとCollins WordBanksでのget + oneself + up構文の生起状況を調査した。結果としてそれぞれ13例23例存在した。また、収集したHere’s Healthでは0例だった。次に大英図書館・スコットランド国立図書館で収集した資料のうち画像として収集した資料のPDF化の作業を始めたが、9000枚以上あるため、この作業は遅れている。平行してPDFで収集した資料及び他の電子図書館から収集したデータ(1300年から1999年)から抽出したところ1800年代に1例、1900年代に5例生じていて、事例数としては予想より少なかった。またCOHA(Corpus of Historical American English)および大英図書館・スコットランド国立図書館で収集した資料及び他の電子図書館から収集したデータ(1300年から1999年)から当該構文を抽出したところ1800年代に1例、1900年代に5例生じていた。そこで動詞をgetに限定せず、再帰代名詞と不変化詞upが生じる例文を抽出し、動詞を限定しない構文としての拡張があるかどうかを調査した。この結果については金沢大学英文学会で「V + oneself + upに関する一考察」と題して発表した。つぎに不変化詞downが生じた構文について研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度収集した映像資料のPDF化を終了させる。さらにいままでの資料での「get + 再帰代名詞 + up」構文の生起数が予想より少なかったので、English-Corporaのサイトを利用しデータの充実をはかる。また可能であれば大英図書館・スコットランド国立図書館で再度昨年収集できなかった資料収集する。また不変化詞downが共起するget構文の分析を終了させ、他の不変化詞(away, off)を含む当該構文の調査・分析を進める。そしてget + 再帰代名詞 + 不変化詞の構文での認知構造の拡張が生じていることを共時的資料で明らかにし、通時的資料で検証していく。さらに動詞を限定しないでの構文の拡張について再帰代名詞の働きかけの希薄化によって生じているとい主張が正しいことを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品に関しては現在所有している物品で対応可能だったので、その一部とその他として計上した費用を資料収集への旅費に充当した。そのため差額が生じた。この差額は今年度の資料収集あるいは学会発表等で使用する予定である。
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