研究課題/領域番号 |
17K02822
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
小倉 美知子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (20128622)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Old English / Middle English / Latin / syntax / periphrases |
研究実績の概要 |
初年度としてはかなり有意義な使い方ができた。まず5月末から6月初めにかけて、ノルウエーのスタヴァンゲルで開催された中英語学会において、ウイクリフ訳聖書のEarlier Version に見られる ex-dative に対する前置詞 to の過剰使用について発表、これはすでに proceedings に掲載が許可され、印刷を待っている。次に私自身が主催する歴史英語学会(SHELL)をイギリス、リーズ大学の International Medieval Congress の中の6つのセッションを借りて開催、世界中から18名の発表者を募って中世英語・文学・文化についての論文発表を行った。これについては現在、ミュンヘン大学名誉教授のHans Sauer 氏とともに編纂中で、この5月には印刷し、ドイツから出版する。夏休みの間は執筆に専念し、Periphrases in Medieval English を書き上げ、現在ドイツからの出版待ちの状態である。さらに11月にはポーランドで行われた歴史英語学会において発表、古英語聖書の詩編におけるラテン語の影響について、時代と方言、それに注釈者の特徴について比較した。これもまたポーランドの学術誌に発表の予定である。 このように、初年度としては非常に良いテンポで研究を進めることができたので、次年度における発展、最終年度での著書としての出版に向けて努力する。2018年度はすでに国内でのシンポジウムの発表が2つ、国外での研究発表が2つ、予定されている。さらに2019年度は国外で2つの発表の予定が決まっているので、できるだけ本研究課題の成果を発表していくのと、少なくとも著書1冊と論文数編により成果を公表するつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に記したように、これまでのところ研究課題に関する発表は、今までの研究の成果とこれからの問題提起の両面から行っており、出版にまでつながっている。本年度はまず日本英文学会のシンポジウムを企画しているため、そこで聖書の英語の特異性と普遍性と題して、行間注釈書に見る語彙・表現の選択の余地を強調する。ラテン語がもとにあると、それを忠実に、一対一の表現で訳していくと考えがちであるが、ラテンが持っていた文法的形態を持たない古英語が、その持てる範囲でどのような表現を選び出すかを、実例をもって示していく。そののち、近代英語協会からシンポジウムの参加を呼びかけられているため、現代のような句読法を持たぬ古英語が、直接話法と間接話法を写本の中でどのように区別したかを提示する。また8月末にはエディンバラ大学で開かれる国際歴史英語学会(ICEHL)での発表が決まっているため、ラテン語にない要素を古英語が創作し、それが中英語まで引き継がれていく様子を実例をもって解説する予定である。そののちロンドンとオックスフォードで写本研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
2019年7月には国際英語正教授学会(IAUPE)がポーランドで開催されるため、国際実行委員としての役割と、Medieval Symposium と main conference の両方で発表し、また司会を務めることになっているため、その機会をとらえて本研究課題の完成に向けた活動を考えている。写本はすべてイギリスにあるため、その夏にもう一度写本研究の為の渡英も行って、執筆内容の完全さを目指すつもりである。ラテン語との比較が常に必要とはいえ、詩についてもCynewlfian などは含めねばならないし、行間注釈書はeditionsのある13versions + Paris Psalter も加える必要がある。さらに、自由訳と共に逐語訳に近い注釈書、その中間に属するBenedictine Rule なども資料として使う必要があるため、最終年度はできるだけ課題の完成に力を注ぎたい。語彙の比較に関する研究の出版の目途は立っているが、syntax に関する研究を何としてもやり遂げたい。
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