研究実績の概要 |
現代英語のBE動詞は、本動詞・コピュラ・助動詞等の多様な意味・機能を持っている。本研究は、こうしたBE動詞は英語の通時的過程の中で文法化した結果できたものであるとの前提に立ち、その変化について共時的及び通時的両面から詳細な分析を行うことを目標としている。 今年度の研究は、まず、BE動詞の用法についての基本的文献を集め考察を行った。対象とした研究は、Bowers (1993), den Dikken (2006), Heggie (1988), Moro (1997, 2000), Pustet (2003), Progovac (2015), Williams (1994, 2003)等多岐にわたる。特にBE動詞がコピュラとしてどのような機能を有しているかに関して考察を進め、BowersやMoro等が仮定するPredPの構造の中核をなすと考える。その上で、こうした機能投射構造が如何に創発したかについて、以下のような実証的な議論を行った。 平成29年5月の日本英文学会では、「機能範疇創発のメカニズム」の題目のもと、 コピュラのBEがPredPの主要部であることを、YCOE等のコーパスをデータとして、検証を行った。なお、その際の議論は日本英文学会第89回大会プロシーディングに掲載された。 平成29年7月の英国リーズ大学で開催されたIMCにおいては、”Ambiguity between the BE perfect and the BE passive in Old English”の題目のもと、古英語におけるBE+過去分詞の構文の意味と構造について、古英語の福音書マタイ伝を資料として、議論を行った。その際、古英語訳の原文であるラテン語との比較を通して、古英語のBE+過去分詞の構造的曖昧性について詳細に分析を行った。なお、本発表原稿をもとに現在論文を執筆中である。
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