研究課題/領域番号 |
17K02824
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
保坂 道雄 日本大学, 文理学部, 教授 (10229164)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文法化 / 古英語 / 中英語 / 近代英語 / 助動詞 / BE |
研究実績の概要 |
現代英語のBE動詞は、本動詞・コピュラ・助動詞等の多様な意味・機能を持っている。本研究は、こうしたBE動詞は英語の通時的過程の中で文法化した結果できたものであるとの前提に立ち、その変化について共時的及び通時的両面から詳細な分析を行うことを目標としている。 令和3年度の研究は、BE+現在分詞・過去分詞を含む構文について近代英語を中心に分析を行う予定であった。しかしながら、これまでの4年間で既に古英語・中英語・近代英語のBE+現在分詞・過去分詞の構造についてある程度考察を進めているため、近代英語を含めた通史的研究を行うこととした。また、本年度は研究期間の最終年度にあたるため、英語のBE動詞の文法化に関する総括的議論を行う予定であったが、新型コロナ感染症の拡大に伴い、国内外での研究発表の機会が限定され、予定していた研究活動が停滞せざるを得なかったため、研究期間を1年延長することとした。そのため、総括的議論は次年度行うことを予定している。 特に本年度注力した研究は、BE動詞が他の助動詞と共に形作る多重言語構造の分析である。現代英語では、He might have been skinned alive.のような多重助動詞構造が観察されるが、古英語や中英語での使用は限定的なものであった。特に古英語では、法助動詞+BE+過去分詞が多勢を占め、その後、完了形や進行形との共起が見られるようになることが確認された。これは、構造的見地からすると、AuxP(法助動詞構造)とPassP(受動態構造)の出現のあと、PerfP(完了形構造)やProgP(進行形構造)が出現したと想定されるものであり、適応的言語進化の1例であると考えられる。こうした点に関して、日本英文学会や米国言語学会にて研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、今年度はBE動詞の文法化に関して総括的議論を行う予定であった。しかしながら、新型コロナ感染症の拡大による影響で研究期間を1年延長することとなり、研究計画を一部変更し対応することとなった。しかしながら、これまでの4年間で、古英語・中英語・近代英語における「BE+現在分詞・過去分詞」の研究は予定を上回る進捗状況にあり、次年度総括的議論を行うことには問題なく、延長した期間を有効に利用する予定である。具体的には、York-Toronto-Helsinki Parsed Corpus of Old English, Penn-Helsinki Parsed Corpus of Middle English, Penn-Helsinki Parsed Corpus of Early Modern English等の文法タグ付言語コーパスを利用した実証的研究から得られた知見を、理論的側面から再検討を行い、研究実績概要で述べた研究発表につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、BE動詞の文法化に関する総括的議論に注力する予定である。具体的には、BE動詞を利用した統語構造(コピュラ構文、受動構文、完了構文、進行構文等)が通時的にどのように発達してきたかを、各時代の言語コーパスを分析して得られた研究結果をもとに、総合的に考察を行う。その際、言語の文化進化的側面にも議論を広げ、英語の構造が適応的に変化する様相を実証的かつ理論的に論じていく予定である。 なお、令和4年9月に開催される国際会議Joint Conference on Language Evolutionに参加し、これまでの研究成果を発表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナ感染症拡大の影響で国内外の学会での活動が制限され、旅費を中心に大幅な残金が生じた。そのため、研究期間を1年間延長し、次年度の国内外の研究活動に充当する予定である。具体的には、今年9月に金沢で開催される国際会議JCoLE2022への出席や名古屋大学等での研究会参加・資料調査を予定している。また、可能であれば海外で開催される学会に参加したいと考えている。
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