研究課題/領域番号 |
17K02825
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石黒 太郎 明治大学, 商学部, 専任教授 (60296548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 古英語 / 韻文 / 相関構文 |
研究実績の概要 |
2017年度の研究では、当初の予定を若干変更し、Junius写本に収められているGenesis Bにおける接続詞nuの相関構文の分析から始めた。この韻文作品は古サクソン語で制作された韻文作品を古英語に翻案したものであり、現存する古サクソン語の作品断片と照合することで、古英語とならぶゲルマン語の相関構文との比較ができた点で意義のある研究であったと考えている。この研究成果は"The Clause-Initial nu in the Old English Genesis B"と題する論考にまとめて、『明治大学教養論集』第530号(2017)、pp. 127-35に発表した。 本年度の後半は古英語の韻文作品の中でもっとも校訂本の多いBeowulfを中心に研究を実施した。相関構文を研究する中で、parentheses 挿入語句と呼ばれる表現が、古英語の韻文作品の中で節と節を現代英語とは異なる方法で結びつける、ひとつの大きな特徴となっているという認識をますますもつようになった。挿入語句は、古英語の韻文作品の文体の特徴とされており、先行研究でもその存在を前提として議論がなされている。20世紀後半以降のすべてのBeowulf刊本において挿入語句が句読法によって示されているのだが、どの語句を挿入語句とするかについては校訂者の判断が大きく分かれている。統語的に関係のある節と節の間に入り込む挿入語句は、本研究課題の相関用法を研究する上で無視できない現象となっている。 また7月に開催されたリーズでの国際学会(IMC2017)においてロンドンのJane Roberts名誉教授をはじめ多くの中世研究者に会い、本研究課題について多くの助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた作品からの用例の収集と分析は完了していないものの、その一方で次年度に予定していたJunius写本に収められているGenesis Bの用例の収集とその分析を初年度に終えることができたので、全体としてはおおむね順調に進めることができたと考えている。また本研究課題について意見を求めることができる中世研究者が多数出席することが分かったため、次年度に計画していた国際学会参加を初年度に実施し、多くの助言を得ることができた。さらにBeowulfの挿入語句について、全刊本の網羅的な調査結果をまとめることができたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
まだ半数以上の作品について用例収集、分析が残っているので、その作業を中心に行う予定である。時間的制約から、当初予定していた中英語の韻文テキストの調査を縮小し、その分、今回重要性を再認識した挿入語句の研究に時間を割きたいと考えている。 2018年7月にリーズで開催される国際学会にて研究発表することが決まっており、Beowulfにおける挿入語句について報告する予定である。10月には別の研究課題でロンドンに出張する際、ロンドン大学名誉教授Jane Robertsに会い、2019年7月にポーランドで開催される国際学会で発表する論文について相談する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた校訂本の購入費用が予定額を上回り、また次年度に購入を予定していた校訂本の購入をする必要が生じたため前倒し支払を受けた。その一方で、学会参加にともなう費用が予定していたよりも少なく済み、また予定していたデータベース使用料を払う必要がなくなったため、上記の次年度使用額が生じた。 研究課題に関わる校訂本や研究図書の購入費用にこの額をあてる計画である。
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