研究実績の概要 |
本研究は、英語における音配列や強勢付与に子音や母音の固有の重さという観点から説明を与えようとするものである。特に、音配列については音節構造とは独立した子音連続の適格性、無強勢音節における音節初頭子音と音節末尾子音との関係も考慮に入れる。また、重さと音韻素性の関係を明らかにし、重さとは別の概念とされているソノリティー(聞こえ度)との一本化の可能性も探る。 当研究課題初年度である今年度は、主に強勢付与について考えた。英語の強勢が音節構造と密接に関わっていることはよく知られているが、音節構造が同じであっても異なる強勢型を示す場合もある。例えば A.'las.ka と 'ca.lum.ny は LHL、a.'mal.gam と 'cha.rac.ter は LHH(L, H はそれぞれ軽音節、重音節)という音節構造を持つが、強勢型は異なる。これらの場合、後ろから2番目の音節が重音節であるにもかかわらずそこに強勢が置かれない 'ca.lum.ny, 'cha.rac.ter が例外とされるが、報告者は強勢付与に語末音節の重さが関わっていると考えた。具体的には、'ca.lum.ny, 'cha.rac.ter の語末音節は音節核が空、音節末尾子音が舌頂性共鳴音 /j, r/ を持つため軽く、2音節フットに組み入れられないため強勢が1つ前の音節に与えられるとした('[ca.lum].ny, '[cha.rac].ter)。また、この考えに至る過程で英語のフット構造と韻律外性を再考し、特に後者についてはこの概念を用いない方が英語の強勢付与をより適切に説明できることを示した。
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