研究実績の概要 |
今年度は主に接尾辞付加と強勢位置、および Yod Coalescence と呼ばれる歯茎阻害音 [t, d, s, z] と硬口蓋接近音 [j] との融合現象を検討した。 形容詞形成接尾辞 -al が付加された形容詞は、いわゆるラテン語強勢規則に従って後ろから2番目の音節が重音節であればその音節に、軽音節であれば1つ前の音節に主強勢が付与されることが知られているが、実際には後ろから2番目の音節が軽音節にもかかわらずその音節に主強勢が与えられる場合や、後ろから4番目の音節に主強勢が与えられる場合がある。このような例外は、前者については形態素境界が再分節を阻止した結果後ろから2番目の音節が重音節になると、後者については後ろから2番目の重音節が相対的に重い子音である阻害音によって閉じられていない場合に弱化が起こるとそれぞれ想定することで説明できることが分かった。 Yod Coalescence については、この現象が当該阻害音の調音法、強勢位置、音節構造、形態構造、方言といった様々な要因に影響を受けることを示し、とりわけ assume, caesura, commissure のような場合においては相対的に軽い子音である [s, z] が無強勢の先行音節に引き寄せられることによって生じるとの分析を行った。これは catalogue の第2音節などの成節子音化を説明するために先行研究で提案されている sonorant left capture と同様の現象であると考えられる。また、この現象には当該音節の末尾の分節素の種類やフット構造に関する条件も関わっていると思われ、次年度も引き続き検討する。
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