研究実績の概要 |
本年度は主に過去に検討したアメリカ英語における弱母音を分節素の重さの観点から再考した。city, motto のそれぞれの語末に現れる弱母音はそれぞれ空の音節核を持つ //_i//, //_u//(空の音節核を下線で表す。)という構造を持つと考えられるが、前者は単母音(monophthong)のように実現する一方、後者は二重母音(diphthong)のように実現する。また、後者は following のように母音が後続したとき曖昧母音+ [w] と交替することがあるが、前者はhappier のように母音が後続したときにも曖昧母音+ [j] と交替することはない。これらの現象は //i// は //u// よりも軽く音節末位置から音節核に波及する一方、より重い //u// は音節末位置から後続音節の初頭位置に再分節されることが可能であるからであると結論づけた。 本年度はさらに、前年度において子音の重さと音節構造の関わりを扱った際に検討した現象の1つである /j/ の融合(Yod Coalescence)について、イギリス英語では tune, deuce のように破裂音 /t, d/ が融合を起こす一方、sue, Zeus のように摩擦音 /s, z/ は融合を起こさない理由を考察した。さらに、後者については sugar, sure のように例外的に融合を起こした例がごく少数存在するが、これについても音節構造から説明を試みた。 本年度は本研究課題の最終年度であるが、得られた知見は2022年度基盤研究(C)「英語における音韻的揺れについて」(課題番号22K00603)に引き継がれる。
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