研究課題/領域番号 |
17K02833
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
住吉 誠 摂南大学, 外国語学部, 教授 (10441106)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 統語的融合 / フレーズ化 / 英語の柔軟性・変則性 |
研究実績の概要 |
本研究課題の最終的な目的は(1)英語の柔軟性を示すデータの発掘(2)内省と英語の実際の齟齬を修正するための見直し(3)統語的融合とフレーズ化による柔軟性・変則性の説明の3つであった。研究計画に記した2年目の研究内容はおおむね予定通りに進んでいる。 まず、データの収集についてであるが、ペーパーバックを利用した実例の収集、ウェブ上のコーパスの利用による大規模なデータの収集ともに順調に進んでいる。2年目は特に「二重that構文」「接続副詞 to add that」のデータを中心に収集したが、それ以外にも興味深いデータが集まっている。また、各種文献からの知見の吸収も滞りなく進んでおり、特に 「二重that構文」については、実例を重視する理論的な言語学者の知見にも触れることができた。 研究計画1年目で行った「have long V-ed 構文」やassist/try の補文の変則性についての研究は、論文として公刊する準備を進めている。また、本年度(2年目)で行った「二重that構文」の研究成果については、2018年5月の日本英文学会のシンポジウムで口頭発表をする機会に恵まれ、会場での質疑応答によりさらに内容を深化させることができた。この研究成果も論文にまとめる準備を進めている。さらに、英語の動詞補文の変則性について研究会で発表し、論文としてまとめた。「to add that」の研究については、2018年9月に開催された Europhras2018において発表が決定していたが、台風による関西国際空港閉鎖のため渡航ができず、やむを得ず発表をキャンセルせざるを得なかった。しかし、この研究は、研究年度3年目に日本英語学会シンポジウムにおいて内容を改訂したものを発表する予定である。自然災害で一件の発表をキャンセルせざるを得なかった以外は、全体として概ね順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題がおおむね順調に進展していると考える理由は以下の通りである。 まず、英語の柔軟性・変則性を示す例が予想以上に多く収集できているという点が挙げられる。ペーパーバックなどからの実例を出発点にコーパスを検索するという手法を1年目以上に集中的におこなったので、多種多様な例を多く収集することができた。2点目は、本研究課題に関係する英語学関連書籍、フレイジオロジー関連書籍の出版が相次いでおり、最新知見に多く触れることができたということがある。収集したデータとこのような最新知見を照らし合わせることで、最新の研究でも気づかれていない事実を発掘できた。3点目に、研究年度1年目2年目で明らかにした成果を、口頭発表、論文という形で順調に世に問うことができているということがある。1年目にBICLCE7で発表した「have long V-ed 構文」、研究代表者が企画者・講師の1人を務めた日本英語学会シンポジウムで発表したtry/assist 補文の変則性について、その成果を研究年度3年目に公刊する予定である。研究年度2年目に日本英文学会シンポジウムにおいて「二重that構文」の研究発表を行った。また、同年度の英語コーパス学会語彙研究会において英語の動詞補文の変則性について口頭発表を行った。前者は論文集として公刊する予定であり、後者は論文を発表することができた。2年目は Europhras2018 にてもう一件発表が決定していたが、台風被害による関西国際空港閉鎖のため渡航ができず、発表をキャンセルせざるを得なかった。しかし、この発表内容については、その後さらに精緻化を進め、研究年度3年目に日本英語学会シンポジウムにおいて発表予定である。予期していない自然災害はあったが、それを補う形で別の発表機会を持つことができており、成果の発表も全体としては問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究年度3年目は、2年目まで行っているデータの収集と分析はそのまま継続する。研究年度1年目、2年目で収集することができたペーパーバックからの実例を出発点に、ウェブ上で利用できるコーパスを徹底的に活用しながら新たなデータの発掘に努める。また各種学会や研究会に参加し、最新の知見の吸収と研究者間での意見の交換を積極的に行う。この年度に特に重点的に行うのが、研究成果の公表である。1年目、2年目に行った研究の成果を3年目に精力的に公表していく。日本英語学会のシンポジウム、関西英語語法文法研究会などで口頭発表を行う予定である。また、論文としては、1年目で発表した動詞補文の変則性について、研究代表者が編者のひとりとなっている論文集において公刊準備が進んでいる。同じく1年目に行った「have long V-ed構文」の研究についても、その成果を出版物の一部として取り込んだものが準備中である。研究年度3年目で口頭発表を行う予定の研究についても、論文や書籍の形で発表する準備を同時進行で進めており、研究最終年度に当初予定していた成果の公表は問題なく進む予定である。海外の学会においても積極的に発表する機会を得ていきたいと考えている。 一方で、研究年度2年目で生じたような、自然災害による意図しない研究発表のキャンセルなどが起こることも十分考えられる。このようなことが生じた場合は、すぐさま別の発表の場を模索していくことで、発表する機会を失しないようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年9月に行われたEurophras2018において研究発表が採択されており、2018年度研究費の50%程度を旅費として使用する予定であったが、台風21号による甚大な被害のため、渡航数日前に関西国際空港が閉鎖され物理的に渡航が不可能となった。別の空港から出発する便を手配しようと試みたが、発表当日までに会場であるポーランド・ビャウィストク大学に到着できるような日程を組むことは不可能で、発表をキャンセルせざるを得なかった。そのため旅費として使用する予定だった金額を次年度に持ち越すことになった。その分については、研究年度3年目において海外での発表機会を積極的にもつようにすることで使用する予定である。
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