研究実績の概要 |
最終年度である平成31年度は、平成30年度に引き続き音声実験を実施、分析することで、筆者の仮説について検証した。音声実験は、平成29年度に明らかにした頻出する英語音声変化を実験材料とし、キャリアセンテンス(“Say〇〇〇, please.”)にそれらを挿入した英文を英語母語話者に朗読してもらうという形で実施した。筆者は、英語母語話者の心理には英語のリズム単位となる基本フットが存在し、それは400ms.~500ms.であることを明らかにしており(神谷, 2013)、このことから、音声変化は基本フット(400ms.~500ms.)を境界に生じ始めると仮説を立てていた。端的に述べれば、この基本フット(400ms.~500ms.)よりも速い発話速度では非常に高い確率で音声変化が生じ、一方、これよりも遅い発話速度では音声変化が生じにくいということになる。しかし、本実験では、基本フット(400ms.~500ms.)が閾値となり音声変化が生じるのではなく、発話速度が上がると、それに比例するように、音声変化が生じやすくなることが判明した。さらに、速度に関わらず音声変化が生じる例(たとえば偶発同化であるが、実際には確立同化のように常に同化を伴うなど)も見られた。これらの考察結果については、学術論文集(片平55号)に纏めたところである。 また、平成31年度では、得られた結果をデータベース化し、筆者が勤務先で担当している英語コミュニケーション科目の講義において活用した。
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